“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
小林祐希「全て俺がやらなくていい」
“大人のプレー”を生んだ名波の教え。
posted2017/02/02 11:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
オランダのピッチに立っていたのは、24歳の成熟した男だった――。
エールディビジ第20節・ヘーレンフェーンvs.フローニンゲンの北オランダダービー。この試合、ダブルボランチの一角として先発フル出場をした日本代表・小林祐希は、常に首を振って周囲の状況を見渡し、時には献身的に守備ポジションを取り、時には正確な長短のパスでリズムを作り出し、フリーランニングでフリーの選手を生み出すなど、90分間“大人のプレー”を見せていた。
結果は0-0のドロー。エールディビジでUEFAヨーロッパリーグ出場圏内である4位につけるヘーレンフェーンは、この試合でリーグ2試合、カップ戦1試合の計3試合で勝ち星無しと足踏みをしているが、小林は試合中も試合後も気丈な振る舞いを見せた。
「前半の入りはよくて、途中で悪くなって、また後半よくなるのが今のうちのパターン。でもそれで良いと思うんですよね。その悪いときに、俺とかレザ、アルヴィン、GKが考えれば良いので、若い奴らは思い切ってやって、俺らに誘導されていることを知らずに楽しんでくれれば良いなと思います」
小林祐希は自分のことを若手だと、これっぽっちも思っていないのだろう。素直にそのことを彼に伝えると、こう返した。
「そりゃあもう、2年前くらいから、俺は若くないと思っていた。それは危機感というか、世界的に見ても、世間的に見ても、サッカー選手の世界では24歳は全然若くない。ハメス・ロドリゲスがコロンビア代表のキャプテンをやって、ネイマールがブラジルで10番を背負って、ポグバがユベントスの中心でやっていて、バランもそう。みんな21、22歳そこらでそういう地位を築いている現状を見るとね……。ほとんど俺より年下だよ」
チームメイトには多くの年下の選手が。
チームの攻撃を構築する1トップのレザ・ゴーチャネジハドこそ29歳だが、左ウィングのサム・ラーソンは23歳、右ウィングのアルベル・ゼネリは21歳、そしてトップ下にはレアル・マドリーからやってきた18歳の新世代のスター候補であるマルティン・ウーデゴー。彼の前には自分より若い選手がずらりと揃っている。
もちろんここでアピールをして、いち早くステップアップとなる移籍を果たしたい気持ちは小林も同じだ。だが彼はピッチ上の監督として、全体のバランスを支える重責を担い、チームを勝利に導くことを、ユルゲン・ストレッペル監督に求められた。それに対し、小林も『成熟した大人』として応えている。