“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
小林祐希「全て俺がやらなくていい」
“大人のプレー”を生んだ名波の教え。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/02/02 11:00
インタビューに応じてくれた時のオランダでの小林。海外移籍で心身ともに鍛えられている様子が、よく分かる取材だった。
若くしてキャプテンの重責を負うことに悩み……。
当時のチームメイトも、彼のプレッシャーを少しでも軽減するために、さまざまな言葉をかけてくれたという。
「チームをまとめるとか、そういうのは思わなくて良いよ」
「若さを出して、思い切り行け!」
「お前がガンガン楽しんでプレーをしていれば、自然と周りがサポートをしてくれるから」
周りの選手達はまだ若いキャプテンをなんとか励まそうとしてくれたが、小林にはそれがよく分からなかったという。
「若い選手がキャプテンマークや10番を背負うときは、誰でもそう言われると思う。だけど、俺はそういう気持ちには一切なれなかったんです。『俺が引っ張らなきゃ』とか、『俺が良いプレーをしないと』、『点を獲らないと』と。その前年のキャプテンマークを巻いていなくて、21番を背負っていたときとは違った『俺が、俺が』になっていたんです」
やがて彼はそんな自分に行き詰まり、環境を変える決断をした。それがプロ2年目の7月でのジュビロ磐田への移籍である。
この移籍が彼の大きなターニングポイントとなった。
「全て俺がやらなくていいんだ」
加入当初と、翌シーズンの2013年は試合に出られない時期が続いたが、2014年にシャムスカ監督、そして途中から名波浩監督が就任すると、一気に主軸の座を掴んだ。
「ジュビロに入って、一番学んだことが、『全て俺がやらなくていいんだ』ということ。だってサッカーは11人いるんだから、やってもらうところはやってもらえばいい。そう思うと凄く考え方が変わってきたんです。名波さんに『お前が全部やらなきゃいけないけど、本当に全部やらなくていい。良いバランスでやれ』と言われましたし、一気に気持ちとして楽になりましたね。
実はその時に影響を受けた選手がいて、それがメスト・エジルなんです。
ちょうどそのとき、エジルがレアルからアーセナルに移籍したときの、アーセナルでのデビュー戦を見たんです。そうしたら彼自身は派手なプレーを一切していないのに、周りが生き生きとプレーをしている。特に彼からパスを受けた選手がノビノビとプレーするんです」