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春高バレー連覇の下北沢成徳。
監督が語る教育、沙織、そして愛。
posted2017/02/01 08:00
text by
久保大Masaru Kubo
photograph by
Hirofumi Kamaya
「成徳」――。
女子バレー界においてその響きは、独特の重みを持つ。ロンドン五輪で全日本女子を銅メダルに導いた木村沙織、荒木絵里香、「メグ・カナ」と呼ばれバレー人気を復活させた大山加奈……。攻撃力のある大型選手として日本バレー界を牽引してきた彼女たちは、皆、下北沢成徳高校の卒業生である。
現在、VリーグでプレーするOGは10名以上。2連覇した全日本高校選手権(春高バレー)の2年連続MVPで、2020年の東京オリンピック代表候補として期待を集める黒後愛を筆頭に、今年も4名がVリーグ入りする。なぜ、成徳で選手は育つのか。30年以上チームを率いてきた小川良樹監督に、その秘密を聞いた。
――180センチという高さとパワーをあわせ持つ黒後について、先生は入学した時から「日の丸をつける選手」と言われていました。この3年間、何を考えて指導してきたのでしょうか?
「ちょうど木村沙織が引退する年に、彼女が同じVリーグの東レアローズに入団する。少し運命的な感じがします。よく愛はスパイクをほめていただきますが、私からみると重要なのはサーブレシーブ。沙織が抜ければ、サーブレシーブのできる大きい選手が日本にいなくなる。
愛は、全日本でもサーブレシーブを担える選手だと思います。彼女は、もともと速いトスを打つのはうまい。ただ沙織がそうでしたが、技のうまい子は、技に逃げる傾向がある。ほっておくとすぐにかわすプレーをするので、沙織には3年間『高いトスをしっかり強く打て』、『ブロックが2枚きても、しっかり打て』と言ってきました。愛はパワーもあるので、スパイカーとしての能力は伸ばしつつ、サーブレシーブを中心で受けさせて、つなぎもできる選手としての育成を考えてきました」
「沙織はトレーニング嫌いで逃げ回ってたけど(笑)」
――ただ、サーブレシーブを受けてスパイクも打てば、当然ケガのリスクも高くなる。
「そこは一番気をつかいました。1年生で入った時は、能力は高いけどガラス細工みたいだなと思っていました。1年生からレギュラーになって、練習や試合で負荷がかかると、やはり痛みがでる。そうした痛みは、ある程度パワーのある子の宿命でもあるんです。
ただ、沙織はトレーニングが大嫌いで逃げ回っていたんだけど(笑)、愛は途中から積極的に取り組んでいた。体作りをしっかりやっていたので、3年生になって体の強さが出てきて、この1年大きなケガがなくやってこれたのかなと。あの身長でなおかつパワーがあるので、鍛えなきゃいけないし、休ませなければいけない。そのバランスが非常に難しかったですね」