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春高バレー連覇の下北沢成徳。
監督が語る教育、沙織、そして愛。 

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久保大

久保大Masaru Kubo

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photograph byHirofumi Kamaya

posted2017/02/01 08:00

春高バレー連覇の下北沢成徳。監督が語る教育、沙織、そして愛。<Number Web> photograph by Hirofumi Kamaya

春高連覇の中心となった3年生の(左から)山口珠李、山崎のの花、堀江美志、黒後愛は、今年Vリーグ入りが決まっている。

「どこまで追い込むか、休ませるかは、最後は勘」

――春高前には3週間休ませたそうですね。

「春高の東京予選が終わった後に、右足に炎症が出た。春高まで6、7週間だったんですが、これは思い切って休ませるしかない、と。国体で負けていた(準優勝)ので賭けでしたが、腹をくくりました」

――今年もVリーグに4人が進みますが、みんな選手生命にかかわるようなケガはせずに、春高で高いパフォーマンスを見せて、卒業していく。これはフィジカルの強化が実ったのでしょうか?

「この2年、決勝のコートに立った選手は痛みをおさえるテープを巻いていませんでした。トレーナーの岩崎正人さんと一緒に、『選手をケガさせたら我々の負けだ』という意識でやってきました。追い込んで体をしっかり鍛えながら、それがケガに結び付かないような練習にする。これを、かなり前から工夫してやってきました。

 ただ、どこまで追い込むか、どこまで休ませるか、は口では説明できないんです。集中力がちょっと欠けているな、コートの中で疲れを感じるな、というのを感じて、最後は勘。愛を3週間休ませたのも、長年の感覚でこれくらいなら春高に間に合うし、パフォーマンスも出せるはずという勘なんです」

ここ5年で4回全国優勝、何があったのか。

――木村沙織の代が春高で準優勝した2004年を最後に、しばらく全国大会の決勝からは遠ざかっていました。それが2013年に春高優勝を果たすと、この5年で4回の全国優勝(春高3回、インターハイ1回)と復活。還暦を過ぎての復活劇には何があったのでしょうか?

「約10年、ずっと勝てませんでした。相当迷いましたし、『もうこのまま終わるんだろうな』とも思っていました。この間で、自分を相当見直しました。自分の不勉強だとか、選手をどうやってやる気にさせるかだとか。

 勝てる、勝てないは別にして、いいチームを作りたいという気持ちはずっと強く持っていました。そのために練習法、指導法、トレーニングを試行錯誤しながらやってきましたので、結果が出てホッとしています。ただ、これが正解ではない、ゴールではないという気持ちも持っています。あと何年バレーができるのかわかりませんけど、もっと高めていきたいと思っています」

【次ページ】 選手のフォームを統一しない、監督が目立ちすぎない。

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