“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
打倒・青森山田は現れるのか?
高校選手権4強、徹底プレビュー。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2017/01/06 12:00
強豪校が姿を消す中、青森山田は盤石の戦いを見せている。準決勝以降で待つのは順当な結果か、それとも波乱か。
青森山田はFC東京内定のGK廣末陸ら堅守を誇る。
一方の青森山田は3試合で13得点1失点。優勝候補筆頭に相応しい戦いぶりを見せている。
青森山田はU-19日本代表でFC東京入団内定のGK廣末陸、アンカーの住永翔が守備の要だった。ただ試合を重ねるごとにセンターバックの橋本恭輔と小山内慎一郎のコンビが成熟し、守備の安定感がさらに向上した。たとえサイドを破られたとしても、彼らが中央できっちりとはじき返せるのだ。
この守備が効力を発揮し、12月に入ってからは、プレミアイースト2試合、チャンピオンシップの広島ユース戦、そして選手権でも初戦から3回戦まで、5試合連続無失点を記録。準々決勝の正智深谷戦では73分にセットプレーから今大会初失点を喫したとはいえ、青森山田の牙城は難攻不落だ。
この堅守は大会前から十分に計算ができていた。ただ、守っているだけでは勝てない。トーナメントで勝ち上がるには、前線にここぞという場面でゴールを奪い、チームを勢いづけるような“お祭り男”が必要だ。
インターハイ得点王、鳴海彰人が好調をキープ!
その存在がFW鳴海彰人。昨年から4-1-4-1システムの1トップを張る男は、ずば抜けた身体能力を活かし、多彩な動きで相手の間隙を突く弾丸ストライカーだ。前回の選手権では2ゴール、今年度のインターハイでも得点王となる7得点を挙げ、ベスト4進出に貢献した。
一方で高校年代最高峰のプレミアリーグでは、相手のレベルも高く、献身的な前線からの守備で体力を消耗してしまう場面もあり、今大会前はゴールから遠ざかっていた。
しかし、選手権ではチームが主導権を握る時間も長く、ゴールに向かうパワーを十分に持った状態で勝負が出来る。“水を得た魚”は、大会初戦の鵬翔戦で鮮やかなファーストタッチから左足アウトサイドで冷静にゴールを射抜くと、3回戦の聖和学園戦でも2ゴール、そして準々決勝の正智深谷戦でも千葉入団内定のMF高橋壱晟のパスを左足で押し込んで、先制点。3試合連続ゴールで夏冬得点王も視界に捉えている。
堅守に“お祭り男”の存在。そして鳴海にボールを供給する高橋と、プロ注目の2年生MF郷家友太の2シャドーの安定感。その陣形は強固で“真のユース年代日本一”の称号に相応しい。
2チームを比較すると、地力では青森山田が上だが、アップセットを起こした東海大仰星の勢いも侮れない。ポイントは青森山田のツーシャドーと、東海大仰星のダブルボランチのマッチアップ。
そして、これにプラスして東海大仰星は、やはり“お祭り男”に仕事をさせないことが重要になる。東海大仰星がやるべきタスクは多いが、東福岡戦のように全員で遂行し続けることが出来れば、再び金星を挙げる可能性はある。