“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
元日本代表GKの父と週1で特訓――。
ヴィッセル内定・前川黛也の強み。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/12/22 11:00
前川黛也のサイズの大きさ、そして表情。かつて広島の守護神を務めた父の姿が想起される。
インカレでは好セーブ連発も、筑波大の前に敗戦。
「高さはあったので、ポジショニングとステップワークはさらに意識して取り組んだ。ある程度コースを消すことが出来れば、それなりに反応で止めることが出来るので、そのアプローチはこだわりましたし、自信があります」
この言葉通り、全日本大学選抜、ユニバーシアード代表(2015年、韓国光州大会で3位)で活躍し、今年、ヴィッセル神戸入団が内定し、彼が大学入学時に掲げた目標をすべて達成した。
そして、迎えた大学最後の大会である第65回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)。関西第4代表として出場した関西大は、初戦から黛也のスーパーセーブや安定感抜群の空中戦、守備範囲の広さに支えられ、東海学園大学、鹿屋体育大学を下した。
筑波大との準々決勝でも、彼はビッグセーブを見せた。しかし、終盤に2点を奪われ、1-2の敗戦。彼の大学サッカーは幕を閉じた。
「自分の一番の武器は“吸収力”だと思っています」
それでも、次の舞台はJリーグ。神戸で研鑽を積む日々がやって来る。
「自分の一番の武器は“吸収力”だと思っています。GKとしてしんどいことばかりでしたが、中3の終わりから始めて、これまで日々成長をしていると実感出来るので本当に楽しい。そこは他の人にないものだと思っています」
プロ入りの時も、父は黛也の決断に口を出さなかった。それはこれまで彼が歩んで来た道のりを誰よりも間近で見て来たからだ。
「何事もチャレンジをして行くにあたって、失敗はいっぱいある。その失敗があってこその“気付き”なんです。失敗をして、それを振り返って、自分と向き合って、じゃあ次どうするべきか考える。工夫を重ねて、謙虚になる。向上心を持つ。こうすることで人は成長して行く。黛也はそこを理解して着実に積み重ねられていると思う」