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「電通とFIFA」という怪物を読む。
W杯を巡るサッカービジネスの奥底。 

text by

伊野尾宏之

伊野尾宏之Hiroyuki Inoo

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photograph byWataru Sato

posted2016/12/15 07:30

「電通とFIFA」という怪物を読む。W杯を巡るサッカービジネスの奥底。<Number Web> photograph by Wataru Sato

巨大化するサッカービジネスとFIFAの実態を、「電通」という視点から捉え直す。

W杯以外にも五輪、世界陸上の広告宣伝を手掛ける。

 ここから高橋氏と電通は国際スポーツ大会のマーケティングに深く関わっていく。ワールドカップを頂点とするサッカー以外にもオリンピック、世界陸上といった多数の国が参加するスポーツイベントの広告宣伝を電通が手掛けるようになる。

 私が小学生の頃、母親が買ってきたコカ・コーラの瓶にロスオリンピックのロゴが入ったヨーヨーがついてきたことがあったのだが、ああいうのもすべて電通が関与していたのか、と思い知らされる。

 この本はサッカーだけでなく、世界中でスポーツを「好きな人がやるもの」から「お金を払って見るもの」に変えていく、マーケティングビジネスという世界を迫真の描写で書きだしていく。

熾烈で、生き馬の目を抜く水面下の戦い。

 高橋と電通はスポーツの世界で権益の頂点にいるような男たちと、息を飲むような交渉を繰り広げる。

 世界のスポーツイベントすべてに食い込んで権益を得ようとするスポーツ用品メーカー、アディダス社の社長(当時)、ホルスト・ダスラー。

 1974年のFIFA会長選挙で大方の予想を覆し、それまでヨーロッパ人が独占していたFIFA会長の座にブラジル人として初めて座ったジョアン・アヴェランジェ。

 1984年ロサンゼルスオリンピック組織委員長、ピーター・ユベロス。

 巨大な組織は自分たちの利を得るためにさまざまな権謀術数をめぐらせる。

 そして国際スポーツ大会の宣伝を一手に引き受けたい各国の代理店は、なんとか彼らと契約を取ろうとこちらもまた頭をめぐらせる。

 それは華々しいスポーツの表舞台からは決して見えない、熾烈で、生き馬の目を抜く水面下の戦いである。

【次ページ】 一連の流れはアベランジェが会長になったからこそ。

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