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宇佐美貴史の出場機会が急増中。
「弱者のサッカー」も出来るのだ!
posted2016/12/15 11:30
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
出場機会と出場時間の増加は、何を意味しているのだろうか。
12月10日のハンブルガーSV(HSV)とのアウェーゲームで、宇佐美貴史は3試合連続となる途中出場を果たした。与えられたプレー時間は21分。これはアウクスブルクにやってきてから最も長いものだった。
大きな期待をうけて2度目のドイツ生活をスタートさせた宇佐美は、開幕戦こそ後半36分から途中出場を果たしたが、そこからは試合に出られない時期が続いていた。
リーグ戦14試合を終えた時点で、途中出場が4試合、先発はいまだ0だ。ベンチ入りしながらも出番がなかった試合が4試合、怪我で欠場したのが3試合、怪我以外の理由で試合のメンバーからもれたのが3試合ある。
そもそも宇佐美がアウクスブルクにやってきたのは、ロイターGMに評価されたからだ。彼は、現役時代にドルトムントでCL優勝も経験した名選手でもあった。
ガンバ大阪との移籍交渉の最中に、昨シーズンまで指揮をとっていたバインツィアル監督がシャルケへ移り、新たにシュスター監督が就任するという、ハプニングの一言では片づけられない大きな出来事はあった。それでも、シュスター監督が宇佐美の能力を認めなければ、移籍の話は消滅していたことだろう。
ただ、シュスター監督の就任は、宇佐美にとって不幸の始まりだと言われる可能性はあった。彼が昨シーズンまで指揮をとっていたダルムシュタットで極めて守備的なサッカーをしてきたのは、以前のコラムに書いたとおりだ。
宇佐美は「弱者のサッカー」を身につけようとしている。
しかし、移籍が決まる直前に起こった監督の交代劇を、宇佐美本人はこんな風に表現している。
「戦術はおおまかにわければ、『強者のサッカー』と『弱者のサッカー』というのがあると思いますけど、自分はどちらかというと『強者のサッカー』を今までやってきた。だからこそ、今やっている監督のサッカー、やろうとしているサッカーを身につけるのは僕にとって『必須』というか……。このサッカーに完全にフィット出来れば、より使いやすい選手になると思います。
今の監督は、守備から入る。まずは、失点をしないことを考える。その上で、『守から攻』に(素早く)移ることを徹底していくスタイルだと思うので。そのスタイルの中に、自分が身に付けられるものは必ずあるはずですし、それを身に付けたときが成長なのかなと思っていました。だから、全然ネガティブにはとらえていなかったです」
宇佐美はこれまで自身が取り組んで来たサッカーと、シュスター監督の求めるサッカーを端的に言い当てている。