岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
世界5位に健闘、10位に完敗の理由。
岩渕健輔が語る日本ラグビーの課題。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2016/12/01 17:55
ジェイミー・ジョセフHCのラグビーにおいてキックは極めて重要な要素だ。どんなスピーディーな展開が見られるだろうか。
ジョセフHCのスタイルは、戦術的柔軟性が重要。
それを考えれば、試合の途中からキックの使い方を変える、あるいは相手が得意とする「アンストラクチャード(オープンプレー)」の打ち合いに付き合うのではなく、自分たちが得意とする攻撃の「型」に、相手をはめていくような発想が求められていました。
もちろんジェイミー・ジョセフHCは、キックを有効に使えるようになることと、オープンプレーからも攻撃を仕掛けられるようになることを目指して、一連のテストマッチに臨んでいます。またウェールズ戦に関して触れたように、チームとしても選手個々のレベルとしても、アダプタビリティーのレベルが確実に高まってきているのも事実です。
しかし、より高いレベルで柔軟性を発揮したり、オープンプレーの状況でもユニットとして攻撃を展開できるような、真の意味での組織性を徹底していくことは今後の重要課題になります。それこそが、ジェイミー・ジョセフHCが導入を試みている新たなプレースタイルを、自分たちのものにしていくのに役立つからです。
フィジカル強化は、スーパーラグビーで。
フィジーに敗れた3つ目の要因としては、やはりフィジカルの問題が挙げられるでしょう。
先に述べたように、日本代表は力量で上回る相手に「個」で対抗するのではなく、あくまでも「組織」として対抗していくのが前提になります。
ただし、これは個か組織かという話ではありません。正確に言うならば、組織で戦うためにこそ、個のレベルを上げていくのが重要になるのです。
そして選手のフィットネスやストレングスは、一朝一夕に改善できるものではありません。
では日本代表は、どう対応すべきでしょうか?
そこで浮かび上がってくるのが、日本ラグビー界全体として、現行の制度や人材を最大限に活用していく発想、より具体的に言うならば、スーパーラグビーを有効に活用する発想です。実はこれこそが、今回のテストマッチを通じて私が最も必要性を痛感したテーマでもありました。