岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
世界5位に健闘、10位に完敗の理由。
岩渕健輔が語る日本ラグビーの課題。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2016/12/01 17:55
ジェイミー・ジョセフHCのラグビーにおいてキックは極めて重要な要素だ。どんなスピーディーな展開が見られるだろうか。
なぜフィジーに大差で敗れることになったのか。
日本代表はフィジーの選手が反則によって1人退場した後もトライを許し、6-21で前半を折り返します。後半の20分前後からは、足が止まった相手に連続して攻撃を仕掛ける場面も見られたものの、ミスからの失点が最後まで響き、25-38で試合を終えています。日本とフィジーは、世界ランキングでそれぞれ11位と10位につけていますが、スコア的にも内容的にも、ランキング以上の差を感じさせる内容となりました。
「ウェールズにあれだけ善戦したのに、なぜフィジーと接戦に持ち込むことができなかったのか?」
おそらく読者の皆さんの中には、このような疑問を抱かれた方もいらっしゃるでしょう。
その理由は、大きく分けて3つあると言えます。
1つ目は、チームのプレースタイルの違いです。ウェールズやジョージアなど北半球の代表チームは、重量級のフォワードとスクラムなどのセットプレーの強さを活かしながら、組織として戦いを挑んできます。
しかしフィジーやアルゼンチンのような南半球のチームは、個の強さを武器にオープンプレーからボールを回して攻撃を展開するスタイルを、より得意としています。
日本は、強さと重さ、そして組織力を前面に押し出してくる北半球のチームと対戦した場合には、組織として対抗することができます。本来であれば、フィジーのようなチームを相手にした場合には、一層組織力で対抗していくのが定石になりますが、実際には、守備の場面などで1対1の状況を強いられるケースが度々見られました。
戦術的な柔軟性がまだ不足している。
この傾向は2つ目の要因、すなわち戦術的な「アダプタビリティー(柔軟性・適応能力)」が、十分ではなかったという問題にも関係してきます。
フィジー戦に臨んだ日本代表は、ジョージア戦やウェールズ戦と同様にキックを多用しましたが、思ったほどキックを有効に活用できませんでした。理由は明白です。ジョージアやウェールズと違い、フィジー代表は自陣深くにボールを蹴り込まれても、難なくボールをつないで攻撃を展開してくるからです。