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松本山雅のサッカーは、魂に来る。
J1昇格プレーオフの雰囲気やいかに。

posted2016/11/22 11:00

 
松本山雅のサッカーは、魂に来る。J1昇格プレーオフの雰囲気やいかに。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

アルウィンを初めて訪れた人は、ほぼ例外なくその異常な雰囲気に圧倒される。これは松本山雅が作り上げてきた重要なレガシーなのだ。

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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J.LEAGUE PHOTOS

 いやあ、すごい。

 松本山雅FCのサッカーは、観る者の魂を揺さぶって離さない。

 11月20日に最終節を迎えたJ2リーグで、松本山雅FCは3位に終わった。J1への自動昇格となる2位以内には、得失点差で届かなかった。5年ぶり5度目の国内トップステージ復帰を優勝で飾ったコンサドーレ札幌、1年でのJ1復帰を決めた清水エスパルスの歓喜を横目に、松本山雅はJ1昇格プレーオフに臨むことになったのである。

 松本山雅は、着飾ったサッカーをしない。横浜FCをホームに迎えた最終節では、1トップの高崎寛之へ徹底的にボールを集めた。188センチのポストワーカーが最前線で起点となり、チーム全体が推進力を高めていく。

 タテへ突き進んで行く意識が徹底され、ビルドアップでのパスワークにこだわらず、ゴール前へのクロスが相手守備陣に圧力をかけるそのサッカーには、モノクロの時代のイングランドサッカーが重なった。日本ではもはや聞かれない「キック&ラッシュ」という言葉を、思い起こさせるものでもあった。

目の前のボールにすべてを注ぐ姿は、まさに「決闘」。

 だからといって、現代サッカーからかけ離れたわけでもないのである。1対1の局面に臨む松本山雅の選手たちは、目の前のボールを支配することにエネルギーのすべてを注ぐ。紛れもない「デュエル」を展開しつつ、「決闘」という日本語こそふさわしい迫力と闘志が、ピッチ上に溢れ出る。

 一人ひとりが挑むボールへのバトルに、連動性が加わっていくから攻守が途切れない。切り替えがスピーディになる。その裏付けとなっているのは、現代サッカーで欠かせない走力である。

 身体が前のめりになるような興奮が、松本山雅のゲームでは絶えることなく迫ってくるのだ。サッカーの本質を徹底的に追求した彼らのプレーは、上質なエンターテインメントでもある。

【次ページ】 42試合のうち24の勝利を積み重ねたスカウティング。

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