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松本山雅のサッカーは、魂に来る。
J1昇格プレーオフの雰囲気やいかに。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/11/22 11:00
アルウィンを初めて訪れた人は、ほぼ例外なくその異常な雰囲気に圧倒される。これは松本山雅が作り上げてきた重要なレガシーなのだ。
42試合のうち24の勝利を積み重ねたスカウティング。
全42試合のJ2リーグで「24」の勝利を積み重ねてきた要因には、緻密なスカウティングも見落とせない。
松本山雅で5シーズン目を迎える反町康治監督は、対戦相手を徹底的に分析する。そのうえで、勝利へのシナリオを描いていくのだ。松本山雅がセットプレーを強みとするのも、高崎だけでなくキャプテンでセンターバックの飯田真輝、3バックの一角を担う後藤圭太が、180センチを超える高さを備えているからだ。
横浜FC戦の決勝ゴールも、セットプレーから生まれている。途中出場の三島康平が、難易度の高いヘディングシュートを突き刺した。シーズン途中に水戸ホーリーホックから獲得した彼も、183センチの長身FWである。そして、横浜FCはCKからの失点が多いことを、反町監督はスカウティングで把握していた。狙いどおりの決勝点だったのだ。
アルウィンの雰囲気は、J1を含めても特別。
横浜FC戦では開始9分に先制点を喫し、2-1と逆転した直後に追いつかれた。それでも勝点3をつかんだのは、圧倒的なまでの熱気がスタジアムを包み込んだからでもある。82分の決勝点で勝利したこの日、ホームスタジアムの「アルウィン」は過去最多の19632人の観衆で埋め尽くされたのだった。
J1での経験も豊富な34歳の田中隼磨は、「今日のような内容でも勝つことができたのは、素晴らしい雰囲気を作ってくれたファン・サポーターのおかげです。声援がチームを後押ししてくれるし、今日は相手への圧力がすごかったと思います」と話す。スタンドの熱が選手たちを奮い立たせ、ピッチ上の躍動感がさらにスタンドを熱くさせる一体感には、ヨーロッパのスタジアムの香りが漂う。
J2リーグの3位から6位までがトーナメントで争うJ1昇格プレーオフは、リーグ戦上位チームのホームスタジアムで開催される。Jリーグのなかでも特別と言っていいこの舞台が、2014年に続くJ1昇格を目ざすチームの支えとなるのは間違いない。