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松本山雅のサッカーは、魂に来る。
J1昇格プレーオフの雰囲気やいかに。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/11/22 11:00
アルウィンを初めて訪れた人は、ほぼ例外なくその異常な雰囲気に圧倒される。これは松本山雅が作り上げてきた重要なレガシーなのだ。
乗り込んでくる岡山にとって、今年は特別な年。
11月27日に開催されるプレーオフ準決勝で、アルウィンへ乗り込んでくるのはファジアーノ岡山だ。J2参入8年目のシーズンで過去最高の6位へ食い込み、初のプレーオフ進出を勝ち取った。
シーズン終盤のファジアーノは、勝利から遠ざかった。最後に勝ったのは34節のFC岐阜戦で、その後の8試合は4分4敗に終わっている。ザスパクサツ群馬との最終戦も、3-0でリードしながら同点に持ち込まれてしまった。7位のFC町田ゼルビアより勝利数が1つ少なく、勝点で並ばれた原因である。
J1昇格プレーオフでは年間順位の優位性が保たれ、引き分けの場合は3位の松本山雅が決勝へ進出する。ファジアーノは勝つしかないのだ。今シーズンの直接対決では1勝1分の成績を残しているものの、アルウィンでは引き分けている。待ち受けるのは厳しい戦いだ。
元日本代表でキャプテンを務める岩政大樹は、シーズン開幕前に「2016年は本当に勝負の年だと感じる」と話している。鹿島アントラーズでJ1制覇を成し遂げた経験を持つ34歳のセンターバックは、熱っぽい口調で語った。
「僕が一番思っているのは、ファジアーノに結構長くいる選手、J2に上がったころからずっといる選手たちが、30代に差し掛かっているんですね。ファジアーノの歴史として、彼らがいるうちに上げたいというのがあるんです。今年は若手も揃って、ファジアーノにずっといる選手たちが30歳前後で、ベテランも加地さんが残ってくれたし、赤嶺も来てくれてチーム内のバランスも良くなった。J1へ上がれる可能性が、いままでよりはあるシーズンになっていると思います」
ドイツW杯に出場した36歳のDF加地亮、J1で2ケタ得点をマークしたことのある32歳のFW赤嶺真吾らがチームに安定感をもたらし、リオ五輪代表で22歳の矢島慎也が攻撃のタクトをふるう。チームの得点源は27歳の押谷祐樹で、攻撃のジョーカーは22歳の豊川雄太だ。バランスのとれた陣容は、松本山雅に決して見劣りしない。
11月27日のアルウィンは、確実に最高の雰囲気になる。
一発勝負の90分で、勝敗を分けるのは何か。松本山雅の田中は、「お互いに手の内は分かっているので、とにかく自分たちのサッカーをすることに集中したい」と語る。
過去4度のプレーオフでは、6位からの昇格を果たしたチームが2つある。その一方で、3位チームがJ1へ辿り着いたのは一度だけだ。
キックオフ前の現時点で分かっていることがあるとすれば、11月27日のアルウィンが最高の雰囲気に包まれることだろう。歓喜と絶望が交錯するゲームには、サッカーというスポーツが秘める魅力と魔力が潜んでいる。