プレミアリーグの時間BACK NUMBER
“お試し期間”を経て代表監督へ。
青年指揮官でイングランド再建を。
posted2016/11/20 11:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
11月13日付けの『サンデー・タイムズ』紙は「本物に見えてきた」と、イングランド代表の強さを評していた。といってもこれは、フットボールではなくラグビー母国代表のことである。
前日に南アフリカを下したチームは、誕生1周年を迎えるエディー・ジョーンズ体制下での連勝を10に伸ばした。ただ、その前日には、サッカーのイングランド代表もスコットランドとのロシアW杯予選で3-0の勝利を挙げていた。国際大会予選では33試合連続負け知らず。しかし、強豪復活を目指すチームは体制自体が決まっていないという問題がある。
もっとも、試合翌日の『ミラー』紙には「スコットランド撃沈でサウスゲート就任確定」との見出しがあった。U-21代表監督を務めていたガレス・サウスゲートがA代表の暫定監督となったのは、今年2度目の監督離任を受けた9月後半のこと。指揮を任された年内4試合には、スコットランド戦から4日後のスペインとの親善試合も含まれていたが、正監督昇格への「オーディション」はW杯予選3試合で十分ということだった。
ルーニーにベンチ行きを命じる決断を厭わず。
サウスゲートの采配ぶりを「素晴らしい」とした同紙の評価は褒めすぎと感じるが、「オーディション合格」の評価は国内他紙も同様だった。
初陣のマルタ戦(2-0)は、戦力格差を考えれば凡庸なスタートだった。しかし続く敵地でのスロベニア戦では、チームに変化を与える。前任者のサム・アラダイスに「どのポジションでも頼れる」と信頼されたウェイン・ルーニーにベンチ行きを命じた。試合はスコアレスドローに終わったが、大きな決断を厭わなかった。
スコットランド戦も最終スコアは出来過ぎだが、ラヒーム・スターリングが後半に突破力を発揮。右インサイドを徹底的に狙わせた指示は効果があった。2点目を決めたアダム・ララーナには2列目左サイドにこだわらない自由を与え、アシストを記録したカイル・ウォーカーとダニー・ローズの両SBには積極的な攻撃参加を許した。
ララーナはリバプール、ウォーカーとローズはトッテナムでこなしている仕事に注力させる賢明な判断だった。