プレミアリーグの時間BACK NUMBER
“お試し期間”を経て代表監督へ。
青年指揮官でイングランド再建を。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2016/11/20 11:00
ヴァーディーに熱い指導を送るサウスゲート監督。46歳の青年指揮官に、サッカーの母国はすべてを託すことになりそうだ。
FA会長も「プロ意識の高さ、勤勉さ」を讃えた。
採用を決める立場のFA(協会)も、担当した予選3試合を終え、サウスゲートを第一候補に据えたと思われる。最終的にアラーダイスに落ち着いた前回の監督交代時には、少なくとも今季終了前の招聘が不可能なアーセン・ベンゲル、母国人だが30代と若過ぎるエディー・ハウに興味を示していた。だが、道徳違反によるアラーダイス体制の早期終了で、図らずも46歳の元イングランド代表DFだったサウスゲートにお鉢が回ってきた。
ユース代表の元エリート教育主担当、そしてU-21代表監督でもあった彼には、既に新エース格のハリー・ケインから、マルタ戦でデビューを与えたジェシー・リンガードまで、新世代との絆という付加価値もあったのだ。
スコットランド戦の観戦プログラム上で、グレッグ・クラーク会長がサウスゲートの「プロ意識の高い勤勉な仕事ぶり」をわざわざ讃えていることからしても、FAの気持ちは暫定監督の昇格に傾いているようだ。なお同会長は、CEOのマーティン・グレン、テクニカル・ディレクターのダン・アシュワース、元FA役員で現リーグ監督協会会長のハワード・ウィルキンソンとともに最終決定を行う選定メンバーの1人である。
「チームパフォーマンスには進歩が見られる」
サウスゲート自身は前回こそ「時期尚早」として後任候補を辞退したが、再びの機会でその気になっているようだ。U-21代表監督としての年収は50万ポンド(約7千万円)だが、わずか4試合で同額が提示されたのも大きいだろう。
強敵不在の予選グループFで戦うイングランドは、4試合を終えて勝ち点10ポイントの首位。監督としてW杯に駒を進めるのが見込める状況でもある。「チームパフォーマンスには進歩が見られる」というスコットランド戦後の発言も、正監督としての続投意欲を感じさせた。
そして、本人が語った「進歩」こそがサウスゲート新体制のキーワードであり、現実的なターゲットだ。FAはポゼッションをベースにパスを繋ぎ、内容と結果が共存するサッカーで、1966年W杯以来となる主要国際大会優勝を実現するシナリオを描いている。
しかしながら、その方針に沿ってEURO2012直前に就任したロイ・ホジソンは、世代交代を進めるのが精一杯だった。2014年W杯はグループ最下位。EURO2016も決勝トーナメント1回戦アイスランド戦で“史上最悪”とまで言われた逆転負けを喫した。
その後を受けたアラダイスが采配を取ったのは、わずか1試合。そのW杯予選スロバキア戦も、10人となった相手からの辛勝(1-0)で、内容は乏しかった。