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監督に反逆し、ファンを殺害予告!?
インテルの内部騒乱はなぜ続く。
posted2016/11/18 11:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
「狂人たちの檻の中へようこそ!」
インテルは、成績不振を理由にフランク・デブール監督を今月1日付けで解任した。後任には今年春までラツィオを率いていた中堅指導者ステファノ・ピオリが招聘された。
熱狂的なインテリスタとして知られる有名ショーマン、ロザリオ・フィオレッロは、2009-'10シーズンにクラブが3冠を達成した後、7季目にして9人目の指揮官となるピオリを冒頭の自虐風ツイートで歓迎した。
十分すぎるほどの戦力を抱えながら敗戦を重ねた前監督。あやふやな経営判断を続ける多国籍役員会。そして、走らない選手たち。
「あくまでシーズンの目標はCL出場権だ。時間はまだある」
新監督ピオリは気丈に振る舞うが、インテリスタたちの目には、今季のドタバタぶりがまるで笑えない悲劇的コメディのように映っているにちがいない。
鋭気にあふれていたオランダ人指導者のセリエA挑戦は、わずか85日で頓挫した。
選手を名指しで批判したデブール体制は空中分解。
指揮を執った公式戦14試合で7敗を喫し、解任時点での国内順位は12位タイだった。
解任から2日後、ユース監督ベッキが暫定的に指揮したサウサンプトン戦にも敗れると、ELグループリーグ敗退も濃厚になった。開幕15戦で8つの黒星は、クラブ史において94年ぶりの不名誉な椿事だ。
デブールは、最初から最後まで選手たちの心をつかむことはできなかった。
監督と選手たちとの間で溝が決定的に深まったのは、6節ボローニャ戦での事件だろう。
先発させたMFコンドグビアのパフォーマンスが気に入らず、28分で交代させると試合後の会見で名指し批判。これが、コンドグビア本人だけでなく、ロッカールーム全体に指揮官への嫌悪感をもたらした。
不出来によって交代させられたことは仕方ないにせよ、直属の上司にあたる監督から公の場で批判を受けることは、選手にとって非常に屈辱的なことだ。そして、デブールはコンドグビアに何のフォローもしなかった。プライドを踏みにじられた選手たちにしてみれば、いざという時に守ってくれないボスのために汗水たらして働く道理はない。