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監督に反逆し、ファンを殺害予告!?
インテルの内部騒乱はなぜ続く。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/11/18 11:30
“良識派”であるピオリ氏就任を受けて、周囲との調和を常に心がける長友にチャンスが巡ってくるのかもしれない。
オーナーは南京、会長がジャカルタ在住では……。
後任選びもドタバタだった。
監督交代は一大事にはちがいないが、内外の混乱を避けるために解任と後任発表は同日中に行うのがセオリーだ。しかし、インテルはデブールの解任からピオリ就任決定まで実に1週間を要するという不手際ぶりを晒した。
経営判断の思惑と足並みが揃わないのも無理はない。チームはミラノにあっても、夏に代わったばかりのオーナーは南京にいて、会長はジャカルタにおり、CEOはイングランド人だ。
現場のフロントと中国側は別々に後任候補を立て、OBのブラン(前パリSG監督)やレオナルド、有力とされたマルセリーノ(前ビジャレアル監督)から、6月までカタールで監督をしていたゾラに至るまで候補の顔ぶれは総勢12人に及んだ。
そもそも元監督マンチーニの更迭も、南京側の意向にマンチーニがそぐわなかったために起きたものだ。インテルの親会社となった蘇寧グループは、経営の実権をじょじょに掌握しつつあり、トヒル会長がマンチェスター・Uから鳴り物入りでリクルートしてきたボリングブロークCEOもデブールとともに職を解かれ、後釜には蘇寧側から送り込まれた役員が収まっている。
クラブ運営の拙さやチームの不甲斐なさがスポンサーやサポーターから猛烈に批判される中、火中の栗を拾ったピオリに勝算はあるのか。
ピオリ氏はカルチョの世界で数少ない“常識人”。
今のインテルに必要なのは、冒険的な戦術変更や大掛かりな選手入れ替えではない。選手たちの持つポテンシャルを正常に機能させることが最優先だ。
ユベントスのDFだった現役時代にはトヨタカップで来日し、世界一になったこともあるピオリだが、引退後は地方クラブで研鑽を積み、指導者として地道にキャリアを重ねてきた。カルチョの世界で数少ない“常識人”とされる彼は2シーズン前、予算に制限あるラツィオでCL予選出場権にあたる3位を獲得し、その手腕を実証した。
選手たちのプレー特性を見極め、素材のよさを引き出す戦法を見出すことを前提に、ピオリはラツィオ時代同様4-3-3を採用するはずだ。パルマやキエーボで培ってきたように、何より重視するのは選手たちとの信頼関係だろう。