書店員のスポーツ本探訪BACK NUMBER
「プロ野球を見る私たち」は変わる。
南海ホークスから読み取る文化史。
posted2016/11/02 07:00
text by
伊野尾宏之Hiroyuki Inoo
photograph by
Wataru Sato
父に初めて野球場に連れていってもらったのは、小学校1年生の時だ。
まだ屋根がついてドームになる前の西武球場だった。
確か西武対近鉄戦で、誰が出ていたとか、どんな試合だったかなどまるで覚えていない。
覚えているのは父が売り子のおねえさんから買ってくれた紙コップ入りのコーラに氷が入っていて冷たくておいしかったことと、試合中に突然打ち上がる花火の音が恐くて「早く帰ろうよ」と父の袖を引っ張ったことだけだ。
父は幼い私をよく球場に連れていった。
西武球場が多かったが、神宮球場や後楽園球場の時もあった。
「野球」というスポーツのルールや、「何をするといいのか」「勝つのか、負けるのか」がわかるまでには時間がかかったが、小学校3、4年生ごろにはなんとなくわかるようになってきた。
プロ野球を見れば見るほど、気になることが増えた。
そうすると「野球にはいくつもチームがある」というところから「西武球場は西武ライオンズという青いユニフォームを着たチームが使う球場」であり、「西武球場では西武ライオンズの選手がホームランを打つと球場の外で花火が打ち上げられる」ということまで知っていく。
そうして私は少しずつ「プロ野球を見る」子どもになっていった。
そのうち、いろんなことが気になるようになる。
なぜパ・リーグはセ・リーグに比べて人気がないのか。
大阪圏には阪急、近鉄、南海と3つもチームがあるのはどういう理由なのか。
外野でトランペット吹いて応援している人がいるが、あれはどういう人たちで、いつからやっているのか。
そうやっておぼろげに浮かんだ疑問はすべて「まあそういうものなんだろう」で片付けてしまい、それ以上深く考えることはなかった。