オフサイド・トリップBACK NUMBER
「守ってカウンター」がしたいなら。
日本代表に2つの“型”が足りない!
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/11/01 10:30
日本代表の中盤には、運動量のある選手が揃っている。足りないのは「型」なのだ。
プレッシングが日本ではなぜか重視されなかった。
ところがここで、もう1つの大きな問題に直面してしまう。
効果的なカウンターのためには、守備の網を張り、狙い通りの形でボールを奪うことが必要不可欠になる。ハイプレスをかけるとなれば、なおさらミスは許されない。
だがカウンターの「型」がないのと同様に、日本サッカーにはプレスをかけてボールを奪う「型」についても明確なイメージがないのだ。
もちろん日本でもプレッシングの重要性は常々説かれてきたし、Jリーグにも運動量と組織力を武器に相手のボールを奪うサッカーを見せてきたクラブはある。
しかし、ビエルサ指揮下のチリ代表やアスレティック・ビルバオのように、鬼神の如きプレッシングと、オートマティズムの域に達したカウンターを武器にして、しっかり結果を出したチームはあっただろうか? 残念ながら、すぐに名前を挙げることはできなかった。
考えてみると、これは実に奇妙な現象だ。
たとえば現代サッカーの特徴としては、ゲーム展開のテンポが速くなったこと、選手の運動量が大幅に増えたこと、組織的なプレーが要求されるようになった点などが挙げられる。徹底的に相手のスペースを消すプレッシングこそ、この種の進化が最も反映された戦術だと言っていい。
ところが日本のサッカー界は、なぜかプレッシングには目が向かなかった。その結果、日本は世界の潮流とは明らかに異なる方向に進んできたといえる。
クロップ、トゥヘル、シメオネ、コンテの共通点。
イングランド人ジャーナリストで、戦術分析の第一人者として知られるジョナサン・ウィルソンは、次のように述べている。
「クロップ、ポチェッティーノ、トゥヘル、シメオネ、コンテ等々、現在のヨーロッパサッカー界で注目され、かつ実績も残している監督はプレッシング信奉論者ばかりだ。グアルディオラも例外ではない。そもそも、ここまでプレッシングや守備が注目される素地を作ったのは、グアルディオラとモウリーニョなのだから。
だがバルサが7冠を達成した頃に比べれば、潮目は明らかに変わった。今やプレッシングをかけるのは、『常識』にさえなっている」
プレッシングの浸透は、クラブチームだけにとどまらない。
好例はドイツ代表だ。ドイツは前線からのプレッシングだけでなく、中盤までボールを運ばれた場合には、瞬時に中盤をフラットに組み直し、ボールホルダーを挟み撃ちにする方式を実践している。
このような「可変システム」を、ドイツはすでに2年前のブラジルW杯で使いこなしていた。クラブチームに比べて戦術を浸透させにくい代表チームにおいても、プレッシングはここまで定着し、進化してきているのである。