オフサイド・トリップBACK NUMBER
「守ってカウンター」がしたいなら。
日本代表に2つの“型”が足りない!
posted2016/11/01 10:30
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph by
Takuya Sugiyama
35%対65%。
先日のオーストラリア戦で日本代表が記録したボール支配率は、1-1の引き分けというスコア以上にメディアで取りざたされた。
その評価も様々だ。日本はパスサッカーを放棄してしまった、臆病に自陣に引きこもってしまったと嘆く声もあれば、リアリスティックな戦い方をした、勝負に徹してカウンターを狙ったのは正解だと評価する意見もある。
個人的には、カウンターを軸に据えようとした発想自体は悪くないと思う。ザッケローニ監督時代から支配的だったポゼッション重視に一区切りをつけただけでなく、ハリルホジッチ監督体制の中でも、かなり画期的な変化だった。何より、アウェーでオーストラリアに引き分けるという結果自体は、もちろん評価されるべきだ。先行しながら追いつかれる展開になったとしてもである。
ただし戦術論的に見ると、日本代表はまだ2つの大きな根本的な課題を抱えている。つまり、過去5回のW杯で世界の壁に直面してきたにもかかわらず、カウンターの重要なフォーマット、攻め方と守り方(ボールの奪い方)が確立されていないのである。
リトバルスキー「日本にはカウンターの型がない」
理由ははっきりしている。
日本ではこれまで、いかにカウンターで点を取るかではなく、「守ってカウンター」というサッカーはアリかナシかというレベルで議論がなされてきた。実質的には、「カウンター」というテーマ自体が、日本代表の戦術論からすっぽり抜け落ちてきたと言える。
問題の根は相当に深い。
かつてJリーグでも選手や監督として活躍し、現在ブンデスリーガのヴォルフスブルクでスカウト部長を務めるピエール・リトバルスキーは、すでに2001年の時点で次のように喝破していた。
「日本代表が抱える最も大きな問題の1つは、カウンターの『型』が固まっていないことだ。この傾向は私がJリーグでプレーしていた頃から、一向に変わっていない印象を受ける。おそらく日本では、泥臭く勝つのではなく、きれいに崩してゴールを決めたいという意識が強いのも要因だろう。
しかし世界の強豪国は、パスで崩せない時のオプションとして、カウンターをかける方法を常に考えている。それはドイツ代表でさえ例外ではないんだ」