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チームの継続性とゆるい師弟関係。
現U-19は「あの世代」に似ている。 

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了戒美子

了戒美子Yoshiko Ryokai

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posted2016/10/26 08:00

チームの継続性とゆるい師弟関係。現U-19は「あの世代」に似ている。<Number Web> photograph by AFLO

U-19の攻撃、チームの雰囲気を司る堂安律。「調子乗り世代」は、いい流れにも乗ろうとしている。

選手と監督の長い関係性が可能にするもの。

 世界を逃した8年間、この8強の壁を乗り越えることはできなかったが、相手との巡り合わせはとても大きかったわけだ。今回は、来年のU-20W杯が韓国で行われるため、韓国を除いて4チームが世界切符を得ることができた。実質的にアジアは5枠と考えると、今回の“自動扉”の理由もわかるような気がする。

 それでも世界切符を手にした'06年インド大会、'04年マレーシア大会と現チームには、大きな共通点がある。それは指揮官の継続性、だ。'06年大会で監督を務めた吉田靖は、それ以前に長くコーチとしてこの世代に関わってきていた。もっとさかのぼれば'04年の大熊清は'02年からの続投。'02年のチームは田嶋幸三が技術委員長に就任したため、技術委員だった大熊が抜擢されて引き継いだ。つまりゼロからの準備ではなかったわけだ。

 今大会の内山監督は、前回大会の鈴木監督のチームでコーチを務めた。

「私が前回大会を経験してわかっていることが大きい」

 内山監督は、ことあるごとにそう言う。U-17世代を監督として率いたこともあり、自身の国際経験だけでなく選手との関係性も長きにわたって築き上げてきた。今回のチームでのやんちゃキャラの筆頭である堂安律が「14歳の頃からお世話になっている。僕にとっては恩師でもある」と言う。いわばあうんの呼吸のようなものが成立する人間関係が選手間だけでなく大人である監督やスタッフとも醸成されている。

 内山監督は言う。

「選手も生身の人間。継続性がない限り突破は難しかった」

長谷部誠から引き継いだ坂井大将のキャプテンシー。

 2年おきにU-18チームは立ち上がり、それぞれU-20W杯を目指してきたが、その度に完全に新しい体制でスタートするのではチームの完成度は上がらず、少しでものりしろを用意するということがスムーズな次世代への移行のヒントだと言えよう。

 今大会では、スタッフだけでなく前回大会を経験した坂井大将(だいすけ)も主将として機能した。

「監督はマンツーで話を聞いてくれた」と言い、ここでも濃密な人間関係が見てとれる。また、坂井はブラジルW杯の帯同メンバーも経験しており「W杯の前に長谷部さんが僕と杉森考起も入れてくれて、選手だけを集めてミーティングをしました。それを僕がここで生かさないといけないと思って、選手だけのミーティングをして思いのたけを多くの選手が口にした」と明かしている。経験を引き継ぐ、とはこういうことなのだろう。

【次ページ】 選手が監督を恐れない、ゆるやかな師弟関係。

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