“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
インドの劣悪環境を経験済の強み。
U-16はピッチ内外でタフに「戦う」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2016/09/23 17:30
ピッチはでこぼこ、突然のスコール……。めまぐるしく変わる環境をも楽しむ。それこそがサッカーに必要なメンタルである。
ピッチ状況が一変しても選手たちは柔軟に対応した。
初戦が行なわれた日は、第1試合のオーストラリアvs.キルギスの試合中からにわか雨が降っていた。続いて行なわれた第2試合のベトナム戦は雨こそあまり降らなかったが、グラウンドコンディションはかなり荒れた状態だった。それでも日本のパスワークと果敢に裏を狙う攻撃がはまったことで、大量リードを奪えた。
キルギス戦は前半立ち上がりの劣勢を耐えて、急なポジションチェンジにも全員が順応。FW棚橋尭士(横浜F・マリノスユース)の先制点が生まれ、そこから一気に畳み掛けた。ハーフタイムにはこれまで青空が覗いていた空が一気に灰色になり、強烈なスコールが降り出し、たちまちピッチはスリッピーな状態になった。
一変したピッチコンディション。それにも選手たちは柔軟に対応した。
「後半、あんなに雨が降っていることは知らなかったのですが、まあ後半切り替えて、もっと積極的なプレーをしようと思いました。結果、何回かチャンスを作ることが出来たので良かったです」とFW久保建英(FC東京U-18)が語ったように、すぐに環境を受け入れ、状況に適応したプレーをしていた。特に久保を始め、MF平川怜(FC東京U-18)、福岡慎平(京都サンガU-18)、DF菅原由勢(名古屋グランパスU-18)は、精度を落とすこと無くプレーし続けた。
そして、キルギス戦で負傷したDF小林友希(ヴィッセル神戸U-18)、オーストラリア戦のベンチ入りすらしなかったFW山田寛人(セレッソ大阪U-18)以外は、全員がコンディションとモチベーションを維持していることが、この3連勝に繋がっている。
「僕らは他の国と違って一回経験している」(久保)
「僕らは他の国と違って、本番の会場を一回経験しているので、そこを大会に入ったときにみんなでいかに優位に持って行けるかを話して、強いチームになりたいと思います」(久保)
日本と対照的な意味で印象に残ったのがオーストラリアだ。明らかにオーストラリアはインドの環境に相当なストレスを感じていた。それが見えたのは初戦キルギス戦でのことだった。立ち上がりこそいい入りを見せながらも、徐々にイレギュラーバウンドするグラウンドや多湿の気候にいらだちを見せ始め、オーストラリアらしからぬミスを連発。自滅と言うべき形で初戦を0-1で落とした。
第2戦のベトナム戦も明らかに選手たちのモチベーションは落ちて2-3で敗戦した。関係者に話を聞くと、オーストラリアはホテルや試合会場にかなり不満を持ち、ストレスフルになっているという。現に日本戦も立ち上がりの失点は、お粗末極まりないものだった。