“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
インドの劣悪環境を経験済の強み。
U-16はピッチ内外でタフに「戦う」。
posted2016/09/23 17:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
AFLO
16歳の少年たちにとって、インドの環境は相当衝撃的だろう。
AFC U-16選手権が開催されているのは、インドの南西部に位置する港町・ゴア。筆者はゴア州の州都であるパナジに拠点を構え、そこから毎日車で片道1時間を掛けて練習場に通い、グループリーグ3試合を戦ったGMCスタジアムまでは片道40分を掛けて通っている。
車窓から見えるのは、多くの野犬と“野良牛”、そして時折出くわすデコボコの道と、平気でセンターラインをオーバーして来る対向車と追い越し車だ。そしてこの時期は雨季の終盤で、初戦のベトナム戦の翌日までは常に曇り空が広がり、その後も少しずつ晴れ間が見えて来たが、相変わらず突然スコールが降り出して来る。どんなときでも傘を常備しておかないと、とんでもないことになる。さらに非常に湿度が高く、ホテルの部屋でもエアコンと天井に吊るされている扇風機を回していないとジメジメする状況だ。
そんな環境の中、彼らは戦っている。試合会場のピッチも一見芝生が綺麗に見えるが、その土台となる地面はボコボコで、試合を見ていてもイレギュラーバウンドが散見され、当然日本のように隅々まで手入れが行き届いたピッチとは雲泥の差だ。
6月の事前キャンプでは体調不良者が続出したが……。
だが、やはり『経験』というものはこの年代において重要だと言うことを、彼らはこの環境への適応で示している。チームは6月の事前キャンプでゴアを訪れた時、体調不良者が続出し、あまりの環境の違いに戸惑う選手が多かったという。「これも重要な経験。自分達が戦う場所がいかに普段とは全く異なるかを知らないと話にならない」と森山佳郎監督が言及したように、この経験が今、大きな意味をもたらしている。
今回、インドに来てからも選手たちの表情は非常に明るく、かつトレーニングでも試合でも、イレギュラーバウンドに苦戦すること無く、ノビノビとプレーをしている。トレーニングでは森山監督の“戦え”というメッセージが常に込められた檄に対し、しっかりと呼応し、熱のこもったプレーと、「練習で元気でギラギラな選手を使う」と森山監督が明言しているように、激しいポジション争いを演じている。
結果、初戦のベトナム戦の7-0の大勝を皮切りに、第二戦のキルギス戦も8-0の大勝。第三戦のオーストラリア戦は開始早々に1点を奪ってからの前半は苦しんだが、後半に一気に突き放し、6-0の大勝。3試合で21得点0失点の無傷の3連勝でグループリーグ1位突破を手にした。