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欧州で吹き始めたディープ旋風。
マカヒキが凱旋門賞を勝てば……。
 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byYuji Takahashi

posted2016/09/14 11:00

欧州で吹き始めたディープ旋風。マカヒキが凱旋門賞を勝てば……。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

今年の凱旋門賞は、ロンシャン競馬場よりも地面の固いシャンティー競馬場で行われる。この変更はマカヒキにとっては追い風になるはずだ。

海外のオーナーがディープをつけるケースが増加。

 そしてもう1頭は、ニエル賞の3日前、9月8日の2歳GIIIシェーヌ賞(芝1600メートル)を勝った、日本生まれのアキヒロ(牡、仏アンドレ・ファーブル厩舎)である。アキヒロの馬主は、GIを14勝した名牝ゴルディコヴァなどのオーナーブリーダーとして知られるヴェルトハイマー兄弟。所有する繁殖牝馬バーマを日本に送ってディープインパクトを交配し、2014年2月21日にノーザンファームで生まれたのがアキヒロだ。4代母のゴールドリヴァーは、1981年の凱旋門賞などを制した名牝という良血ファミリーである。

 そのアキヒロのシェーヌ賞の勝ちっぷりが見事だった。最後はマカヒキ同様また手前を右に替え、流すようにしながらも、ゴール前での速度は他馬を圧倒していた。これで2戦2勝。来年の仏クラシックの有力候補となった。

ヨーロッパで新たな血へのニーズは増え続けている。

 アキヒロのように、ヨーロッパのオーナーやブリーダーが繁殖牝馬を日本に送り、ディープインパクトを付けて生まれた仔馬を本国に戻す……というパターンが、このところ多くなっている。

 ディープの種付料は3000万円もするので、競走馬としてペイするためには賞金の高い日本で走らせるのがベストだ。例えば、GIIのニエル賞でも1着賞金は約852万円だから、日本の下級条件の500万下の平場よりは上で特別レースよりは下、という程度。にもかかわらず、本国に持ち帰るのは、繁殖馬としての将来を考えているからだろう。

 日本でサンデーサイレンス系の血が飽和状態になりつつあると言われているように、ヨーロッパでは特にサドラーズウェルズとデインヒルの血が濃くなり、ブリーダーは、異なる新たな血を流入しなくてはならないと考えている。彼らが白羽の矢を立てたのがディープなのだが、その血が、わずか数カ月の間に風を巻き起こそうとしている。

 その風は、もしマカヒキが10月2日の第95回凱旋門賞を勝てば、間違いなく強くなる。

 10年越しの「ディープ旋風」に、期待が高まる。

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ディープインパクト

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