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豊・幸四郎の父にして「名人」武邦彦を偲ぶ。~胸が詰まるほど、美しい葬送だった~
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/08/28 16:00
'57年から'85年まで騎手として、'87年から'09年まで調教師として活躍した。写真は'90年当時。
「名人」の称号で崇められた騎手は、古今東西を見回しても武邦彦さん以外には存在しない。当時としては規格外の172cmの長身を馬上できれいに折りたたみ、手綱を長く持って、気の荒い馬とも自在に折り合った名騎手。絹糸一本で馬を操れる人、と表現されたその名人芸は、「走る馬の邪魔をしないのが騎手の大事な仕事」という表現に集約される。武豊騎手、武幸四郎騎手に継承された、馬に負担をかけない美しいフォームはまさに父譲りのそれなのだ。
騎手として1163勝、調教師としても375勝。7年前、控えめに上げた右手を小さくヒラヒラと振りながら勇退された競馬史に残る偉人が、暑い盛りの8月12日、突然逝去された。今どき決して長いとは言えない77年の生涯だった。