プレミアリーグの時間BACK NUMBER
正守護神ハート放出の一方で……。
ペップ・マンCで輝く“英国産”は誰?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2016/08/27 07:00
ストーンズとコミュニケーションを取るグアルディオラ監督。ポゼッションを最重要視する指揮官にとって、後方のキーマンとなるのは間違いない。
カバジェロが起用されたのは足下の技術があるから。
もっとも、カバジェロが起用された最大の理由は、最後尾で攻撃の起点となるための足下の技術。大きく蹴り出すパターンが多いハートの弱点と言ってもよい。新加入のブラボはカバジェロを凌ぐパス能力の持ち主だ。過去2シーズンのパス成功率を見ても、ハートの5割弱に対して8割近い数字を残している。
もちろん、完璧ではあり得ない。2014年4月、レアル・ソシエダのGKとして蹴り損ないを拾われて25m超のミドルを叩き込まれた失点シーンは、得点者がレアル・マドリー移籍1年目のギャレス・ベイルだったことからイングランドでも知られている。マンCでも後ろから繋ぐサッカー哲学を説く教育者のようなグアルディオラは、理想の実現には危険をも冒す気骨の持ち主でもあるということだ。
イングランドの次世代型DFストーンズとの相性は抜群。
その新体制下で急成長が期待されるのが新CBのジョン・ストーンズだ。エバートンから4750万ポンド(約63億円)で引き抜かれた22歳は、国産には珍しいボールの持てる「ダイアモンド級DF原石」。プレースタイルからも見て取れる勇気の持ち主を将来の代表キャプテンに推す識者もいる。ところが、今夏に決まった母国代表の新監督は、リスク回避を優先するサム・アラダイス。国内では、'66年W杯優勝当時の主将で攻守にエレガントなCBだったボビー・ムーアの系譜を継ぐ新世代が、代表では輝けないのではないかという不安の声も出ている。
その点、マンC新監督の下では開幕節から自ら持って上がるストーンズの姿が見られた。古巣で指摘されたボールの持ち過ぎや強引なパスといった、判断力の問題が見られなかったわけではない。守備の場面で不用意に飛び出してジャーメイン・デフォーへのラストパスを通された。
だが、翌週の2節ストーク戦(4-1)でも先発起用されると、『テレグラフ』紙などでマン・オブ・ザ・マッチの評価を受けるパフォーマンス。続くステアウア戦では、第1レグで大勝(5-0)していた余裕もあってか、指揮官がタッチ沿いでみっちりとコーチングを行うシーンも見られた。「同じ失敗を何度も繰り返さなければミスを許して学ばせるべき」と言っていたのは、自身も同タイプのCBだったリオ・ファーディナンドだが、ストーンズは選手の失敗を恐れない最高の監督に恵まれたと言える。