マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園“悲劇の主役たち”の心の内。
北海、中越、光星の声に耳を傾けて。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/08/25 07:00
優勝した作新学院とともに写真に収まる北海ナイン。準優勝盾を持つ大西をはじめ決勝の舞台まで辿り着いたことは事実だ。
終盤3イニングに8点を取り返された八戸学院光星。
7回の表で9対2。
東邦高を7点リードしながらも、その後の終盤3イニングに8点を取り返されて、サヨナラで敗れた八戸学院光星。
あり得ないような逆転劇がここ数年、何度も繰り返されてきた甲子園でも、ここまで天と地がひっくり返されるケースは初めて見た。
7回2点、8回1点。
じわじわと追い上げる東邦の9回の攻撃。それでも、まだ4点あった。東邦高アルプススタンドのブラスバンドの演奏に合わせて、スタンドで手拍子が始まる。それがいつの間にか球場全体に広がって、今度はそれがタオルに変わる。
八戸学院光星のアルプスだけが何も動かない小さな場所になり、球場全体が振り回されるタオルの波に包まれる。
スタンドの応援以上に、東邦打線の技術を讃えたい。
どうして……?
東邦ばかりが、どうしてこうまで応援されるのかわからない。
「健人くん(藤嶋)の人気じゃないですか?」
隣りの記者もあいまいな返事しかできない。もしかして、相手が光星だから……?
違和感を感じるほどの一体感の中、次々とヒットを連ねる東邦打線。快打が飛ぶたびに、さらに強まる一体感は、いったい何を祝福しているのか、何を期待しているのか。2死から4本のヒットが続き、とうとう5点を奪って、東邦が八戸学院光星をひっくり返してしまった。
最終回、5点を奪った6安打は、すべてドンピシャのタイミングで投球を捕らえた会心の打球ばかりだった。スタンドの応援の効果もあったのだろうが、それ以上に、東邦打線のバッティング技術を讃えたい。