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加藤凌平「4年間団体に懸けすぎた」。
リオ最後の演技で破った、安定の殻。 

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byJMPA

posted2016/08/17 17:00

加藤凌平「4年間団体に懸けすぎた」。リオ最後の演技で破った、安定の殻。<Number Web> photograph by JMPA

「団体で金メダルを取れたのは、本当に幸せでした。けど、やっぱり個人で少し振るわなかったので……また頑張っていくと思います」とコメントした加藤。

種目別決勝平行棒では技が“軽快すぎた”。

 種目別決勝平行棒。加藤には期する思いがあった。

 傍らには、所属のコナミスポーツクラブで監督を務める父・加藤裕之コーチがいた。最も気持ちの落ち着くコンビである。

 加藤は、バーに飛びつき、一つ一つの技を軽快にこなした。だが、もしかすると少し軽快すぎたのかもしれない。演技序盤の棒下ひねりと棒下宙返りの倒立で身体が反ってしまった。

 こうして迎えた最後の降り技。加藤が選んだのはF難度の「前方かかえ込み2回宙返り半ひねり」だった。これにより、Dスコアは団体や個人総合より0.2高い6.8に。種目別決勝の他の選手と比べてもほぼ引けを取らない高難度の構成。後ろにわずかに動いたが、着地は成功した。

 試合後の加藤は、珍しく大粒の汗をしたたらせながら取材エリアにやってきた。8人中8番目に演技をし、ほどなく取材エリアに来たことで、汗がまだ止まっていなかった。

個人でもメダル争いに確実に絡める存在になりたい。

「降りをF難度に変えて初めての実戦だったので、そこに意識が行きすぎて、最後に体力を残すために前半は少し雑になってしまった。予選と団体はほぼベストの演技をしたけれど、Dスコアが6.6しかなかったので、ここは思い切って勝負に出られればいいと思った。満足とはいかないけど、意外に最後に余裕があった」

 したたる汗とも相俟って、その表情はすがすがしく映った。

「4年前と比べると、4年前はわけもわからず団体3種目のみだったが、今回は団体5種目と個人総合、種目別と出て、4年間で成長したという思いはある。個人で表彰台に届かなかった課題を4年後に持ち越せればいい。これからは、日本を引っ張る存在になりたいし、個人的にもメダル争いに確実に絡める存在になりたい」

 スマートな演技で輝きを放ってきた加藤が、たくましさを身につけてきたことを感じさせた。金メダルの達成感の後に感じた悔しさや、本気の渇望。26歳で迎える東京五輪がますます楽しみになった。

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