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マルセイユ移籍の酒井宏樹を直撃!
「26歳、上に行けるか今が勝負の時」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byYusuke Mimura
posted2016/08/03 11:30
名門マルセイユ復活の期待が、酒井宏樹には託されている。ドイツで培ったサイドバックとしての能力を活かす時だ。
負けない戦いではなく、勝つための戦いがしたい。
――当然ながら移籍しやすい環境にありました。
「それで色々と考えました。ドイツ国内のクラブに移籍するとなると、ハノーファーでのパフォーマンスからすれば、中位以下のチームが移籍先になるというのが現実的でした。もちろん、それはドイツのレベルが高いからなのですが……。やっぱり、サッカー選手の人生は短いじゃないですか? たいていの日本人選手は、ヨーロッパにある世界のトップレベルの国で10年プレーするのは難しい。そう考えると、今日の試合で勝ち点が獲れるか不安になったり、負けないためにはどうするかと考えながらプレーするのではなく、絶対に勝たないといけないプレッシャーのなかでやってみたいなと考えていたんです」
――ドイツでのプレーに飽きたわけではなく、勝利を義務づけられるような強豪でのプレーを望むとなると、国外のチームが現実的だったわけですね?
「そうですね。もちろん、今季のマルセイユがすんなりと良い成績を残せるかはわからないですけど。それでも、相手に恐れられた状態で試合に臨むような環境が必要だと思っていたんです。僕がレイソルユースにいたときには、チームが強かった時期で、どんな試合でも絶対に勝たないといけないと言われていました。しかも2-0、3-0で勝たないと許されない。そうなると、サッカーをする感覚も変わってきますから」
――というと?
「常に上のレベルを目指していけるというか。例えば、マルセイユにいる今だったら、1部リーグに残留するために戦うのではなくて、ヨーロッパのカップ戦出場権を獲るために戦えるという感じ。そういうクラブでプレーできれば幸せだなと思っていて、実際に声がかかったので、すごく嬉しかったですね」
苦しいときのチームは「仕事」になってしまう。
――そうした環境に身を置くことが、自身の成長につながると?
「はい。それにそういう環境でサッカーをやっているとすごく楽しくて、あっという間に1年が過ぎていきます。あの感覚をもう1回味わいたい、という思いはありました。苦しい時のチームって、本当に『仕事』になってしまうんですよね。毎週の試合をこなしていく感覚というか……」
――とりわけ、ハノーファーでの4年間のうち2年は残留争いに巻き込まれ、苦しい日々が続いていたと思います。
「そういう面を蛍(山口)に見させてしまって……。僕もキヨくん(清武弘嗣)も、サポートしてあげたいと思っていたのですが。チーム状況もあり、なかなか楽しいサッカーができなかった。それで今は、サッカーをやる以上は、良い意味で勝利へのプレッシャーややりがいがあるチームでやりたいと思っています」