野球のぼせもんBACK NUMBER
日本ハムと3差、8月週末は天王山続き。
SB逃げ切りへ大隣憲司の左腕は唸るか。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/08/02 07:00
過去3シーズンで挙げた通算勝利数は11にとどまるが、大舞台に“強くなった”大隣の存在はソフトバンクに欠かせないはずだ。
一昨年の終盤戦で見せた“神懸かり”ピッチング。
一昨年の10月、大隣は神懸かり的なピッチングを見せた。ペナントレースでは、最終144試合目の事実上の優勝決定戦でバファローズ相手に好投した。優勝して迎えたCSファイナルでは第1戦と最終6戦目で先発を任されてともに好結果を残した。日本シリーズ第3戦でも7回3安打無失点で勝利投手となった。
今年の一軍登板はまだ1試合。昨年手術した左肘の状態が上がってこずに出遅れた。それでも7月10日、ようやくヤフオクドームのマウンドに立つと6回4安打1失点の好内容で、復帰戦を白星で飾った。
「苦しい時期もあったけど、前に背中の手術をした時に比べれば……。『肘ならばまた野球はできる』と思っていましたから」
からからと笑い飛ばす。そうだ。2年前の秋は、大病からの復活だった。国指定の難病である黄色靭帯骨化症から本格復帰した初めてのプロ野球選手として、当時の活躍は劇的に報じられた。
ネガティブだった大隣を変えた登板前日のルーティン。
究極のプラス思考。
大隣の大きな長所であり、これこそが大事なマウンドでもベストピッチングが出来るワケでもある。
「'11年のオフから続けているメンタルトレーニングが大きいと思います。僕の場合、まだ本当の初歩段階ですが、それでも成果を感じられるくらいですから」
もともとはネガティブだった。かつては四球を与えたり走者を背負ったりすると、周りの誰が見ても分かるほど動揺して、そのまま大崩れするのがお決まりの負けパターンだった。
しかし、メンタルトレーニングと出合って以来5年間、登板前夜には必ず行っていることがある。
「1枚の紙があって、マウンドに上がる前に書き込むんです」