プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人、巻き返しの中心は小林誠司。
高橋監督、エースが語る「成長」とは。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/07/22 11:30
盗塁阻止率が3割を超える強肩には定評がある小林誠司。リードに加え打撃も向上し、着々と地固めは進んでいる。
昨年までは「気配りが足りない」捕手だった。
だからである。
「最終決断をしたのは自分である」――大敗の中でそんな思いが、瞬間的にあのコメントに現れてしまったのだった。
もし高橋監督の小林に対する評価が低いものだったら、決してこんなに悩む起用ではなかったはずだ。
2013年のドラフト1位で入団してきて昨年までの2年間、はっきり言って捕手・小林に対する評価は決して高いものではなかった。
もちろんマスクを被れば、小林は小林なりに緻密に計算して配球を組み立てていたが、それがマウンドに立つ投手やベンチからは独りよがりのように映ることが多かった。
「捕手としては気配りが足りない」
こんな声を聞くことも多く、だからこそ一昨年オフに阿部慎之助捕手の一塁転向が決まると、小林だけでは心もとないとチームはフリーエージェントで相川を獲得して、捕手の補強を行った。そして今年もまた阿部の捕手復帰が決まり、小林は再び控え捕手の立場になるはずだった。しかし阿部が開幕直前に右肩を痛めて、開幕マスクが巡ってきたのだった。
菅野「誠司がうまく引っ張ってくれている」
このチャンスに、小林は捕手としての成長を高橋監督に見せた。
「捕手として小林は成長した」
今年は巨人関係者からこういう声を度々、聞くようになった。
「誠司がうまく引っ張ってくれている」
同級生のエース・菅野智之投手は、小林の変化をこう語る。
「今年の誠司のリードで感じるのは、その1試合だけじゃないということですね。僕のその前の登板や、同じカードの前回の対戦でのリードを踏まえて、そこから変化をつけて組み立ててくれる。例えば前の試合でカーブを後半の決め球に使っていたら、次の試合では序盤からバンバンそのカーブを使ったり……。その辺がうまく引っ張ってくれているなと感じる部分ですね」
指揮官もその成長を感じ、正捕手への期待を抱くからこそ、冒頭のシュールな言葉は生まれたのである。