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鹿島の強化部長を20年間務める男。
鈴木満が語る監督、OB、鹿島の流儀。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byShigeki Yamamoto
posted2016/07/15 11:20
鹿島ほど「強豪」という言葉が似合うクラブはない。その紛れも無い中心の1人が、鈴木満強化部長なのだ。
プレッシャーがかかる試合になると、「うちは強い」。
――他クラブの方から「どうすれば鹿島のような強いチームを作れるんですか?」と聞かれることもあるのではないですか?
「『秘伝のたれとかあるんじゃないか』と言われることもあるよ。僕は質問されたらすべて答えるし、隠すことはない。うちのクラブハウスを見学したいと言われたら、どうぞ見てくださいという感じだし。どんどん真似してくださいと言うけれど……」
――でも「満さんのようにはできません」という感じなのでしょうね。
「僕が一番変えちゃいけないと思っているのは、ここの空気感。グラウンドに入って、練習から全力でやる。自分のためチームのためにやること。負ける要素を引き出して、それを無くすような作業を選手同士でやれる。そういう空気感を無くすと普通のチームになっちゃうから。だから、ここへ来たら特別なんだよというのは無くしちゃいけない。でも空気だから、いろんな人が勉強に来てもわからないのかもしれない(笑)」
――結局、最終節に勝ちきって逆転優勝してしまう。その鹿島の強さの秘訣、秘伝のたれは日々の空気感にあると。
「最近思うのは、決勝戦みたいな雰囲気、お客さんが入って、注目されて、この試合に勝つのと負けるのとでは全然違うんだというプレッシャーがかかる試合への入り方というのは、僕が見ていてもこいつらはすごいなと思う。ああいう試合になったら、うちは強いんだよね。そういう意味では、選手から選手への伝承というのがとても大きい。『鹿島アントラーズというのはこういうチームなんだ』と言ってくれている。だから血が受け継がれているんだよね」
内田篤人と大迫勇也がチームに還元した鹿島の流儀。
――「アビスパ福岡戦前日に、ミニゲームに参加した内田選手と大迫選手が『こうやって勝つんだぞ』というプレーをしてくれた」と、小笠原選手が語っていました。
「彼らは必死で練習しているからね。『篤人のリハビリをやってほしい』と協会から依頼されたときに、石井に言ったのは『できるだけトップチームと同じ時間帯でリハビリをさせてくれ』と。日本代表でも海外でもあれだけ長く活躍して、チャンピオンズリーグにも出た経験を持つ選手がそばにいることで、若い選手が得るものは大きいはず。それに、逆にいったんここを出た篤人や大迫が今、鹿島を見てどう感じるのかというのを選手たちに伝えてもらいたいというのもあった。
実際、リハビリ中の篤人がいっしょにメニューを消化することはできなくても、やっぱり大きかったと思っている。僕が何十回と説教するよりも、篤人や大迫といっしょに練習することでいろんなことを伝えてくれたから。鹿島の流儀であったり、空気感であったりを」
――ドイツで戦う選手に必要なものも、その佇まいやひとつのプレーで伝わるでしょうからね。
「本当に大きな効果があったよ」