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鹿島の強化部長を20年間務める男。
鈴木満が語る監督、OB、鹿島の流儀。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byShigeki Yamamoto
posted2016/07/15 11:20
鹿島ほど「強豪」という言葉が似合うクラブはない。その紛れも無い中心の1人が、鈴木満強化部長なのだ。
監督は外国人でも、コーチは常に日本人。
――鬼軍曹だったセレーゾに鍛えられて若手は成長したけれど、彼らが伸び伸びと自信を持ってプレーできる環境ではなかったのでしょうね。そういう状況での監督交代で、能力が弾けた、と。
「なかには『ジョルジーニョのあとにすぐ、石井を就任させればよかったのでは』という人もいるけれど、セレーゾがいてくれての石井だから結果が出ているのも確かなんだ。初代の宮本(征勝)さん以降、ずっとブラジル人監督が指揮してきたけれど、日本人監督もプロ経験者がS級でしっかり勉強をした人材が出てきているし、石井はもう10年以上トップチームでフィジカルコーチやコーチを務めてきたから、監督を任せても問題ないと判断したんだ」
――ブラジル人監督であっても、常にコーチは日本人を置いていますよね。
「そこはずっと変えていない。監督が自分の片腕のような人間を連れてきてヘッドコーチにしたいと言っても、全部断ってきたから。今、剛(大岩剛)やヤナギ(柳沢敦)やハネ(羽田憲司)とOBがコーチを務めているのも、血を薄めないひとつの手法なんだよ。OBを現場に戻すうえでは、年齢的なものや役割、性格、バランスやタイミングなどいろいろと考えて、どう組み合わせていくのかを判断している」
「やっぱりチームに波はつきものなんだ」
――鹿島は1993年から20年以上の間、年間順位が6位以下になったのは3度だけ。タイトルから遠ざかる時期があっても、大きな転換をすることはなかったように思います。
「確かに勝てない時期はあった。やっぱりチームに波はつきものなんだ。波はないほうがいいよ。だってずっと勝っていたいから。
でも下降するような兆しが見えたら、我慢なんだ。もちろん勝つことが大事だけれど、今いる選手を育てていく、育成の割合を大きくしていく時期も必要なんだよ。そうしないと彼らは“昔強かったチームにいるだけの選手”になってしまうから。そういう波をうまく作っていかないと、ガーって上昇したけど、またガーって落ちてしまうことになるから」