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鹿島の強化部長を20年間務める男。
鈴木満が語る監督、OB、鹿島の流儀。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byShigeki Yamamoto
posted2016/07/15 11:20
鹿島ほど「強豪」という言葉が似合うクラブはない。その紛れも無い中心の1人が、鈴木満強化部長なのだ。
ステージ優勝では、胸に星印は増えない。
――そして昨年ナビスコカップで優勝したチームは自信をつけて、今季ファーストステージを獲りました。また新たな時代が始まりますね。
「ナビスコカップを獲れたことは本当に大きいし、あそこで勝ちきったことで、今季はJリーグのタイトルが狙えるチームになったなと思っていた。でも、年間優勝をしなくちゃ始まらない。
2007年の最後に9連勝して優勝し、そこから3連覇となったけれど、2007年時点であのチームが強かったかって言ったら、そうでもなかった。どっちに転ぶかわからないようなチームだった。でも、2007年勝ちきって優勝したから、『自分たちは優勝争いをし、優勝するチームだ』という自覚が生まれて、強いチームになった。
今年もファーストステージを獲って、『それでいいや』なんて思っている選手はいない。それが優勝の力であって、彼らの成長の証だと感じている。ファーストステージを獲ったと言っても、それは本当のタイトルじゃない。この胸につけられるタイトルじゃないことは選手が一番わかっているから」
試合前のミーティングにも必ず参加する。
――ステージ優勝では、ユニフォームに星印は増えないと。そういえば、日本では「強化部長が監督に昇格」なんて記事が出たりします。本来は強化部長のほうが監督よりも上の立場なのに……。
「チームを編成するうえで、代理人とのつきあいやいろんな情報を集めて、選手をマーケットから取ってくるという仕事も強化部にとって大事だけれど、やはり、一番難しいのが監督との立ち位置、監督との信頼関係をどう作っていくかだと思う。だから、Jリーグの会議などでJの社長さんに『強化部長やGMが、監督との関係を築くうえで必要な権限を与えてほしい。その重要性をわかってください』という話をすることもあります」
――強化部長として監督と戦う場面もあるわけですよね。
「戦うというか、僕は言うべきことはキチンと監督に伝える。『こうしたほうがいいよ』と思うことはどんな監督にも言ってきた。練習方法や選手起用、試合中の指示は監督の専権事項だから、最終的には任せるけれど、監督に任せっきりになってもいけないし、あまりでしゃばってもいけない。そこの加減は考えるけれど、僕は監督が成功するため、チームが勝つためにアドバイスをし続ける。
監督には試合前のミーティングに強化の人間を入れない人も多くいるらしいけど、うちで監督がそんなふうに言ったら、監督が交代することになる。監督がどんな指示を出しているかわからないと、選手を評価できないし、監督の評価もできないからね」