マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
夏の埼玉予選で出会った逸材と卵。
浦学の諏訪&蛭間、浦和北の松村。
posted2016/07/14 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
今年も“夏”の予選巡りを始めよう。
前回のこのコラムの中で、「2つの甲子園」の話に触れさせていただいた。
賛否さまざまな反響をいくつもいただいて、多くの人たちが、なんとなく得体の知れないモヤモヤを感じておられることをあらためて確かめられた気がしている。
私の予選巡りは、いつも選手個人が興味の対象なのだが、今年はこれまで以上に、“普通の高校野球チーム”の中でキラッと光った選手のことも記していければと考えている。
お目当ては、浦和学院のショート・諏訪賢吉。
春に見られなかった浦和学院の初戦を見に行った。
9時開始の第1試合だから、8時に着くように向かった。人気校の試合は観客も多く、1時間ほども前に着かないと、屋根の下の席は埋まってしまう。
埼玉・大宮の朝8時はとても8時の暑さではなかった。駅から10分ほどの道でもうくらくらっとくる。
今年の夏も、こりゃあきついぞ……。
ここから甲子園までの1カ月あまり、球児たちも正念場だが、その奮闘ぶりを伝えるわれわれにとっても、体力勝負、根性勝負の1カ月なのだ。
今日のお目当ては、浦和学院のショートを守る諏訪賢吉(ただよし)(3年・174cm76kg・右投左打)だ。
このチームで1年の夏から試合に出ていればかなりの実力者なのは間違いなく、彼が浦和学院に入ってきた時も、1年上で津田翔希(現・東洋大)という好守・強打の遊撃手が活躍していたが、“野球上手”ということでは諏訪のほうが一枚上か……。そんな驚きを持って、諏訪賢吉のプレーを見つめていたものだ。
その後、コンスタントに芯で捉えるバッティングと、安定した捕球、送球のフィールディングを見せて、“任せて安心”の走攻守を展開してきた。この選手の二塁打、三塁打、いったい何本見てきただろう。
粗けずりで伸びしろ期待の「未完の大器」も楽しみだが、実戦で頼りになるヤツが前を行くのは、大学も社会人も、そしてプロだって同じことだろう。