マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
神奈川有数の進学校に現れた1年生。
軟式では日本一、平塚江南・富田歩。
posted2016/07/20 17:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
夏の高校野球、神奈川県予選のテレビ中継の解説をさせていただいて、今年で4年目になる。
参加校188校、“激戦の神奈川”を県内のケーブルテレビのネットワークが、平塚球場で行われる試合を中継している、その解説陣の末席をつとめさせていただいている。
毎年、ネット裏最上段の放送席から熱戦の模様をお伝えしながら、いつも思うことは、神奈川の高校野球のレベルの高さだ。
コールドで敗れたチームでも、必ずオッと思わせるような選手が2人、3人。基本のキャッチボールもしっかりとフットワークを使って、野球の土台がしっかりしている。
選手たちの地道な努力、指導者の方たちの日ごろの骨折り。良い試合とは、選手たちの日常の練習の様子が透けて見えるような、そういう試合のことをいうのだろう。
高校野球の“夏”は毎日、毎日、試合の数だけチームが敗れ去る。
ぞっとするほど残酷に思えることもあるが、それが勝ち抜きトーナメントの宿命ならば仕方のないことで、“負け方”が良ければ、それはそれで勝ちに匹敵する終わり方であろう。
では、最高の負け方とは何か?
持てる実力をすべて発揮して、なお力及ばず。そこに尽きるのではないだろうか。
県下有数の進学校にあらわれた1年生ピッチャー。
“当番”の第1試合が終わってホッとしているところで、関係者の方が「次の平塚江南の1年生のピッチャー、いいらしいですよ」と教えてくださった。
野球の話題で「平塚江南」の名前を聞いたことはない。県下有数の進学校である。大学時代、ひどく勉強のできる平塚江南OBがクラスメートにいたことも、そうした印象を余計に強烈にしていた。逆に、そこに心を動かされた。
神奈川、進学校、投手、快腕……宮台……。漠然と、頭の中でそんな連想が成立していた。