マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
夏の埼玉予選で出会った逸材と卵。
浦学の諏訪&蛭間、浦和北の松村。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2016/07/14 07:00
2015年の選抜大会で大活躍した浦和学院の諏訪賢吉。3年の夏、再び甲子園の土を踏むことができるか。
浦学にコールド負けした鴻巣の投手が気になった。
試合は7回コールド、9-0で浦和学院が鴻巣高を破ったが、その鴻巣高にも1人、キラッと光った選手を見つけた。
先発した根岸真大(3年・178cm60kg・右投左打)の腕の振りが鋭い。
セットポジションから、しなやかな腕の振りできれいなオーバーハンドの軌道を振り下ろす。オッと思ったのが、一塁へのけん制動作だ。投げた右腕がニョロッと伸びていくように見える。指先が描く円弧の大きさは、そのまま腕の振りの“遠心力”となり、鍛えられた腕力が加わることで、攻略困難な球威に置き換わる。
立ち上がり、先頭に死球を与えてすぐに二盗。そのまま崩壊のパターンだったが、ここで諏訪、蛭間の3、4番を速球とスライダーの緩急で投ゴロ、左飛に打ち取った。
強敵相手にも全力で腕を振る覇気が伝わってくる。
速球よりもっと腕が振れるスライダー。だから、緩急が効く。球速帯で速球は135キロ前後か。指にかかった時は、スピンの力で浦和学院打線のバットを押し返す。
打たれても落ち込まない“野球小僧ぶり”。
2回、投手・榊原翼(3年・178cm82kg・右投右打)に高めボールぎみの速球を上から叩かれてレフトに3ランを放り込まれると、2イニングかぎりで中堅へまわったが、連打も食らっておらず、もっと投げられたのでは……と、ちょっと残念だった。
中堅手としても、降板に気落ちしたような素振りはまったく見せずに、イニング間の捕手の二塁送球の時も、前に出てきてバックアップを忘れず、打席で凡退しても一塁から駆け戻ってくる姿には、下半身の柔軟なバネと彼の“野球小僧ぶり”がはっきりと見てとれた。ひとつひとつのアクションのみずみずしさに、「2年生かな」と思ってしまったほどだった。