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次代の守護神候補はストイックの塊。
中村航輔、リオへの道程で得た哲学。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2016/07/11 11:00

次代の守護神候補はストイックの塊。中村航輔、リオへの道程で得た哲学。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

中村は2ndステージ第1節終了時点でリーグ戦16試合に先発。会いたい人に羽生善治三冠を挙げるほどの将棋好きともいう。

「細部にこだわっていかないと。年齢は関係ない」

 初めて『本物の世界』を体感したことで、彼は自分が何をすべきかがはっきりと分かった。同時に、世界で戦うことの意義も理解することが出来た。リハビリの間も、復帰後も、中村はそのイメージが消えないように、意識のレベルを落とすことは無かった。GKとして、自分が成長して行くためには何をすべきか、どう心構えをすべきかを自分に問いかけ続けた。本人もこうGK像について話している

「GKとはゲームを通していいプレーが出来たり、出来なかったりすることがある。その中で色々な局面の前準備は、若かろうが歳を取ろうがずっと修正して改善し続けないといけない。より細部にこだわっていかないと、いいプレーは出来ない。そこに年齢は関係ない」

 GKはシュートが来てから反応してようでは遅い。むしろ、シュートを打たれること自体が問題だ。彼は若くしてそのことを自覚し、普段のトレーニングから予測、予備動作、ディフェンスコントロール、そしてポジショニングなど、細部にまで目を向けてこだわってきた。リハビリ中もそのこだわりをイメージし続けた。その過程が、彼のストイックさにさらに磨きをかけていった。

井原正巳に見出され、福岡のJ1昇格に大きく貢献。

 その姿をしっかりと見ていたのは、2014年まで柏のヘッドコーチを務めていた井原正巳だった。

 2015年に当時J2のアビスパ福岡の監督に就任すると、迷わず中村をレンタル移籍で加入させた。

 そして迎えたシーズン、20歳となった中村はシーズン途中からチーム在籍13年目のベテランGK神山竜一からレギュラーの座を奪い取ると、絶対的守護神としてその才能を一気に開花させ、チームのJ1昇格に大きく貢献してみせた。

 今年1月のAFC・U-23選手権(リオ五輪アジア最終予選)には負傷によりメンバーに選ばれながらも出場辞退となったが、今季から復帰した柏では守護神の座を掴み、さらに安定したプレーを披露。そのプレーぶりは手倉森誠監督にも認められ、リオ五輪出場メンバーにも選ばれた。

【次ページ】 言葉ではなく、プレーで示そうという信念。

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