岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
スーパーラグビー参戦は成功なのか。
岩渕健輔が感じる明確な進歩と変化。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2016/07/07 11:00
ワールドカップで日本に着いた火は、トップリーグ、そしてスーパーラグビーに確かに受け継がれている。
サンウルブズが克服すべき3つの要因。
これは主に3つの要因があると考えられます。
1つ目はメンタル面です。
テストマッチやW杯のようなトーナメントでは、一球入魂的な集中の仕方が要求されます。これに対してリーグ戦は毎週行われるため、テストマッチとは違うメンタル面でのタフネスがより要求されてきます。現にサンウルブズの選手たちも、メンタルコンディションの維持に明らかに苦労していました。
2つ目の理由は、総合的な意味で「準備」が十分ではなかった点です。
今シーズンは、チームの陣容を固めるまでに予想以上に時間がかかってしまいました。本来であれば、このようなハンディを補うのがノウハウや経験となりますが、マネージメント側も含めて、スーパーラグビーを経験したことがある人間の数が限られていたため、十分な対策を講じることができませんでした。
ライバルチームや自分たちのプレーを徹底的に分析し、勝利を確実に引き寄せられるようにする。これは日本ラグビー、ひいては日本という国が持つ最大の武器です。私は「準備力」と名付けていますが、日本代表がラグビーワールドカップ(RWC)2015のイングランド大会で3勝を挙げることができたのも「準備力」によるものだったのは間違いありません。
当然、サンウルブズも同じことをしていく必要があります。今シーズンの経験をしっかり活かし、まずは準備力の部分で、他のすべてのチームを上回っていってこそ、勝利は得られるようになるのです。
チームのアイデンティティーは、強化の基準になる。
3つ目の理由は、「サンウルブズらしさ」というアイデンティティーを、まだ確立しきれていない点です。まだ1年目なので簡単には確立できませんが、これは最も重要なテーマかもしれません。
際立ったカラーがないチームは、たしかにスーパーラグビーにもいくつかあります。しかしプレースタイルの面でもチームの組織文化においても、強豪と呼ばれるようなチームは、はっきりとした特徴を持っています。これはRWCのイングランド大会や、トップリーグの例をみても明らかです。
自分たちはいかなるラグビーを目指すのか、そしてそのためには、どのような規律や慣行を持った組織を作り上げるべきなのかというビジョンが明確であればあるほど、チームの強化は進めやすくなるからです。現にRWCイングランド大会に向けて日本代表を始動させたとき、私が最初に行ったのは、プレーにおいても組織文化の点でも、チームが拠り所とすべきアイデンティティーをはっきりと規定して、コーチングスタッフや選手に刷り込むことでした。