岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
スーパーラグビー参戦は成功なのか。
岩渕健輔が感じる明確な進歩と変化。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2016/07/07 11:00
ワールドカップで日本に着いた火は、トップリーグ、そしてスーパーラグビーに確かに受け継がれている。
スーパーラグビー初勝利をもたらした美しいトライ。
日本のラグビーは、あまり点が取れないという問題を抱えていましたし、また試合の進め方自体が、守りを軸にしたものが多かったのも事実です。
しかし、スーパーラグビーの試合を通して、より攻撃的なスタイルも身につけていくことができれば、日本ラグビー界全体としてプレーの幅がひろがることにもなります。
人材の融合、個の強化、そしてプレースタイルの模索。これら3つの効果が端的に現れたのが、4月23日に秩父宮ラグビー場で行われたジャガーズ戦です。
ジャガーズ戦の直前、サンウルブズは初めて長期の遠征を実施。遠征の最後に対戦したチーターズには、17-92という大差で敗れていました。そのような状況の中でホームに戻ってきたわけですから、選手には精神的にも肉体的にも、かなりの負担がかかっていました。
しかしサンウルブズの選手たちは自分たちのプライドをかけて、初勝利をもぎ取りました。これはサンウルブズが成長する上で、とても意義のある勝利でしたし、後半の17分には見事なプレーも披露しています。16-25と相手に突き放されかけていた場面で、マイボールのスクラムからトゥシ・ピシ選手から立川理道選手へとボールがつながり、最後にデレック・カーペンター選手がトライを奪ったシーンです。
これは試合全体の流れを左右するプレーになっただけでなく、とても象徴的なトライにもなりました。
このトライは、大きな可能性を示唆している。
もともとパスをつなぎながら、すれ違いざまに角度を変えてボールを受け取り、相手DFを突破していくパターンは、昔から日本のラグビー界が得意としてきたプレーです。
このようなプレーをサンウルブズが実践してみせた――しかも昨シーズンまでサントリーでプレーしているサモア代表のピシ選手、ニュージーランド出身でトヨタに所属していたカーペンター選手、そして日本代表の立川選手が連携しながら、日本代表を上回るようなスピードで、コンビネーションを展開したというのは、サンウルブズが秘めた大きな可能性を示唆しています。