プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンUとモウリーニョの復活が始まる。
240億円の予算で「背骨」は出来るか。
posted2016/06/04 10:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
AFLO
5月27日、マンチェスター・ユナイテッドがジョゼ・モウリーニョの監督就任を発表した。古巣に当たるチェルシーのファンとしては、相思相愛だった指揮官と2度目の「離縁」を見た昨年12月以来、噂が高まり続ける中で覚悟は出来ていたつもりでも、国内ライバルとの「縁組み」には違和感を覚えてしまう。
しかし中立的な目で眺めれば、起こるべくして起こった「カップル誕生」のように見える。マンUとモウリーニョは、互いに「復活」という共通の決意を胸に秘める者同士の「パーフェクト・マッチ」だと言っても良い。
マンUの偉人であるエリック・カントナがそうであるように、「サッカーのスタイルが合わない」と見る向きはある。だがこれは元「キング」の意見ではあるものの、少数派を代表する声に過ぎない。新監督との相性を疑問視する一部のマンUファンは、攻撃というクラブ伝統の色と、堅守というモウリーニョ本来の色に目を奪われすぎているようだ。
モイーズ、ファンハール時代を過去にする。
モウリーニョは、単に守備的なチーム像を描く監督ではない。例えば、2004年からの第1期チェルシー時代にプレミアリーグ2連覇を果した当時のスタイル。3トップでピッチの幅を使った速攻を含むダイナミックなカウンターは、攻撃の一環としてウイング・プレーを好むマンUファンの目にも適うものだろう。
1トップを基本とした3年前からの第2期にしても、プレミア王座に就いた2014-15シーズンのチェルシーは、前半戦で20チーム中最少の失点数だけではなく、最多タイの得点数も記録して優勝への足場を築いている。
そもそも、マンUファンの間には、サー・アレックス・ファーガソンが監督勇退を決めた時点でも「後任はモウリーニョしかいない」という声が多かった。その後、攻守に中途半端に終わったデビッド・モイーズ体制、続いて怖さのないポゼッションに終始したルイス・ファンハール体制の下で7位、4位、5位という結果に終わった過去3年間を経て、「モウリーニョなら」という思いが彼らの中で強まっていても不思議ではない。