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<EURO2016展望> 優勝経験なし。それでもベルギーに期待してしまう理由。
posted2016/06/02 11:00
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph by
Getty Images
夢を見たければ、ワールドカップよりもEURO――である。
大会のレベルはワールドカップより上。よく耳にするEUROの決まり文句だが、レベルはともかく、大会を制するハードルなら、ワールドカップよりも低い。
ワールドカップの歴代優勝国は、わずか8カ国。ヨーロッパに限ればイタリア、ドイツ、イングランド、フランス、スペインの5カ国に過ぎない。
これがEUROになると、第1回大会を制したソ連(当時)を含め、優勝国は多士済々の顔ぶれ。ワールドカップとは縁がないオランダも1988年のEUROで悲願のメジャータイトルを手にしている。
東欧勢はソ連のほかに1976年大会のチェコスロバキア、北欧勢では1992年大会のデンマーク、南欧勢では2004年大会のギリシャが、それぞれ王者となっている。アウトサイダーの栄冠は、ワールドカップでは考えられないことだ。
サッカー史を彩る魅力的なチームの優勝もEUROならでは。あの『皇帝』ベッケンバウアーと天才ネッツァーが最後方から交互に前線へ繰り出し、華麗にタクトをふるった1972年大会の西ドイツは、同国史上の最高傑作とも言われている。
ネッツァーの跡目を継いだブロンドの司令塔シュスターが西ドイツに栄冠をもたらしたのも、1980年のEUROだった。それに比べると、ワールドカップを制するときのドイツには華がない。
偉才を擁する『夢のチーム』と言えば、1984年大会のフランスと、1988年大会のオランダだ。フランスには『将軍』プラティニが、オランダには『黒いチューリップ』ことフリットがいた。
いずれも、EURO前年のバロンドール受賞者。プラティニはジレス、ティガナ、フェルナンデスらと、フリットはファンバステン、ライカールト、R・クーマンという傑出した仲間たちと魅惑のフットボールを展開し、観衆の喝采を浴びた。