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ACLで浦和がFCソウルに先勝。
Kリーガー高萩洋次郎と日韓新時代。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2016/05/19 15:00
球際で激しく競り合う高萩と槙野。擬似日韓戦とも言える試合は、まさにアジアの頂点を目指すに相応しい熱戦となった。
Kリーグで今季トップを快走するFCソウルとは?
FCソウルは近年、Kリーグでは全北現代に次ぐ“ナンバー2”という位置づけにあるチームだ。今年は補強の目玉として、2011年から13年まで3年連続リーグ得点王に輝いたダムヤノビッチ(モンテネグロ)の呼び戻しに成功(北京国安より)。いっぽう昨年途中に加わったブラジル人アドリアーノは今季からフィット感を増し、ここまで10節で7ゴールを挙げる活躍。
例年、スロースターターぶりが時に批判の対象になっていたが、今季はここまでKリーグで首位を走る。
浦和の先制点は、そんなチームにとっても苦しい展開を強いられることとなった。
ゲームのなかでチェ監督が仕掛けた“サイン”は2度あった。少なくともアウェーゴールは奪う、という目的のサインである。
「自分たちの良さを出す戦い」vs.「相手をハメる戦い」
1つは後半開始の46分からの選手交代。
2トップの一角、ダムヤノビッチに替え、パク・チュヨンを投入。同時に3-5-2(3-1-4-2)の2列目の左に入っていた高萩を右に移した。
「エースのダムヤノビッチのコンディションが少し良くないと感じた。いっぽう、パク・チュヨンはコンディションが上がってきているので投入した。高萩選手のポジション転換は、周りの選手とのバランスを考えてのこと。やはり彼が得意とする右サイドに移し、能力を発揮してもらいたいと思った」(チェ・ヨンス監督)
確かにMFでのプレー経験が豊富なパクの投入により、攻撃の構成が滑らかになった点はあった。しかしゴールに向かう強さ、「一発の怖さ」が削がれた点では、浦和にプラスに作用した。
もう1つのサインは、71分に196cmのシム・ウヨンを投入したこと。
最前線とも2列目ともとれるあいまいなポジション取りで浦和を混乱させようとした。チャンスは多く作ったが、結果には結び付かなかった。
このゲームに関して言えば、浦和の「自分たちの良さを出す戦い」が功を奏した。
DF槙野智章は「レッズは、相手の良さを消すよりも、自分たちの特長を出していくチーム」と言う。試合前には、ぺトロビッチ監督とこんなやりとりがあったことを明らかにしている。
「3バックの左右のDFが高い位置を取るように指示がありました。個人的には、相手の2トップ(ダムヤノビッチ、アドリアーノ)をケアするために、むしろ下げたいと意見を伝えたんです。しかし、ミシャの答えは“むしろ良さを出していこう”と」