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ACLで浦和がFCソウルに先勝。
Kリーガー高萩洋次郎と日韓新時代。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2016/05/19 15:00
球際で激しく競り合う高萩と槙野。擬似日韓戦とも言える試合は、まさにアジアの頂点を目指すに相応しい熱戦となった。
韓国サッカー界で存在感を見せつけていた高萩。
そんな彼が'15年の夏のマーケットでソウルに移籍した直後に、現地でホームゲームを取材したことがある。
その時に韓国メディアの友人から、「彼がどんなキャリアを歩んできて、フル代表では何キャップくらいあるのか?」という点を聞かれた。質問の裏には2つの背景があったように思う。
ひとつは移籍加入後、高萩はレギュラーを獲得し、いい線の活躍を見せていたという事実。
もうひとつは、決して韓国では有名ではなかった日本人選手に「Kリーグで活躍させてしまった」という韓国サッカー関係者としての意識。
“力の落ちたKリーグ”という構図で批判する記事を書きたかったのだと思う。結果的には形にならなかったが。
高萩の「韓国経由・中国行き」はあるのか?
その日の試合後、ソウルワールドカップスタジアムのミックスゾーンに高萩が現れた。チームバスの出発が近づく中、2つ、質問した。
――ソウルに移籍した経緯を。
「ACLでウエスタン・シドニーの選手として、ソウルと対戦したんです。その際のプレーがチェ・ヨンス監督から評価され、オファーをいただきました」
2つめの質問は、韓国メディアから「日本語で聞けるのなら、ぜひとも聞いてほしい」とリクエストされたものだった。
――韓国で活躍して、中国リーグに行こうという考えはありますか?
「いえ、このリーグで成功することだけを考えています」
返事を伝えると、「なぜだ?」という表情をされた。「日本人から韓国経由で中国に行こうとする選手がついに出てきたと思ったのにな」という。Kリーグは自分たちが中国への中継地としての役割も担っている、という認識を持っている。そんな考えを知らされた機会にもなった。
高萩は移籍後、Kリーグで14試合に出場(2ゴール)、KFAカップでは2試合出場で2ゴールを挙げ、タイトル獲得にも貢献した。
今回の対戦前、現地ネットメディアにはこんな評価が書かれていた。
「3-5-2システムの中盤にあって、逆三角形で構成される中央(1ボランチ+2枚の攻撃的MF)の右側を担う。どんな状況にあっても自由自在にパスを供給できるキック能力を有し、右サイドのワイドの位置から自ら突破をしかけることもある」