熱血指揮官の「湘南、かく戦えり」BACK NUMBER

連敗中でもハードな練習&若手抜擢。
湘南・曹監督と選手の途切れぬ闘志。 

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曹貴裁

曹貴裁Cho Kwi-Jae

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photograph byShonan Bellmare

posted2016/04/27 17:00

連敗中でもハードな練習&若手抜擢。湘南・曹監督と選手の途切れぬ闘志。<Number Web> photograph by Shonan Bellmare

苦しい連敗の中でも、若い選手の抜擢にも意欲的だった曹監督。ユースからの17歳・齊藤未月が大宮戦でJ1デビューを飾った。

迷った時に思い出す――流経大柏の練習風景。

●4月22日(金)

 連戦を戦う中で気を使うのは練習の負荷。この負荷を考えるにあたっては選手にとって必要な場面を、リアリティを持たせて再現してあげることが大事だ。

 例えば1対1のボールキープを30秒連続して行う、ということはミドルパワーの負荷としては良いかもしれない一方、30秒1人でボールをキープし続けるという局面は試合においてまずない。こういった点でいかに試合の状況を想定し負荷を調整できるかということは指導者として持っておかなくてはならない知識であり、絶対に造詣を深めていかなければならない点だ。

 僕にとってはこの「どのくらいの負荷で練習をするか」と「選手がどんなモチベーションで臨んでいるか」の2つが指導する上での大きな柱となっている。この負荷とモチベーションが肌感覚でわからないと、選手の成長や試合の結果で良いものを作り出すことはできない。今日の練習では選手の疲労感を見ながら、少しリラックスできるような内容にしながらも、一定の負荷をかけられるようトレーニングを行った。

 数年前の話、僕が湘南のユース監督を務めていた時だが、本田裕一郎先生が監督されている流通経済大学付属柏高校とプリンスリーグで対戦し、もう何もやらせてもらえず完敗という一戦になった。

 後日、流経柏さんの練習を見に行かせてもらう機会をいただいたのだが、その時このチームの強さがどこにあるかを垣間見た気がした。

 それは練習の中で、例えば選手を1列に並ばせて、さあ今から50本走れと言っても、誰1人として「またこれか」というような空気を出さない光景にあった。本当は「嫌だな」と感じているのかもしれないのだけれど、絶対にそれを見せない。常に1本1本を120%の集中力で取り組んでいく。人によってはそれを指導者にやらされているだけだというふうに感じるかもしれないが、たとえそうであってもそういう練習の雰囲気を作りだすのは簡単なことではない。必要な時に必要な負荷を、選手が本気で取り組む雰囲気の中で行う。自分自身が選手のモチベーションをコントロールできないと感じている者がこれを「スパルタ」の一言で片付けるのは、自分の指導力不足から逃げていることに他ならないと言えるかもしれない。

 今日のスポーツ界では施設も整い、教育制度なども充実してきている。その中だからこそ改めて、選手に毎日良いトレーニングをしていると実感させられること、またそう感じられていない選手を見逃さず、きっちりコントロールできる指導者の力、そういうものの積み重ねが結果に結びついていくのだと思うし、改めて自分の意識を傾けてやっていかねばと感じている。

 迷った時はいつも、あの本田先生の姿や流経柏の練習の雰囲気を思い出すようにしている。

<試合結果>

4月24日(日)J1・1stステージ第8節
湘南0-1大宮
(@Shonan BMWスタジアム平塚)

序盤に大宮が決定機を逸すなど、試合は無得点のまま後半へ。80分、ゴール前に攻め込まれた湘南は、DF三竿が痛恨のハンド。PKを冷静に決められてしまう。若手のMF齊藤や神谷を投入するも最後まで得点は奪えず。勝点を積み上げることはできなかった。

【次ページ】 選手は闘争心を失っていないし、進歩もある。

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