熱血指揮官の「湘南、かく戦えり」BACK NUMBER
連敗中でもハードな練習&若手抜擢。
湘南・曹監督と選手の途切れぬ闘志。
text by
曹貴裁Cho Kwi-Jae
photograph byShonan Bellmare
posted2016/04/27 17:00
苦しい連敗の中でも、若い選手の抜擢にも意欲的だった曹監督。ユースからの17歳・齊藤未月が大宮戦でJ1デビューを飾った。
選手は闘争心を失っていないし、進歩もある。
<試合を終えて>
――大宮戦、どんなゲームプランで臨みましたか。
「自分たちのやるべきことをとにかく徹底することが勝点3につながるという話をして、よりコンパクトにより一体感を持ちながら、戦術的な狙いもそこに入れながら試合に臨みました。最初から最後まで自分たちのペースで運べるほど甘くないことは分かっているので、相手の時間帯を我慢して、後半相手の疲労が見え始めたときに交代選手も含め一気に流れを加速させるというのがゲームプランのひとつ。その意図もあり、後半途中で推進力のある未月(齊藤)を入れましたが、2人目の交代選手を投入するのはすごく難しい決断でした。先発で出た選手がゴールに向かう気持ちを失わず、相手の隙に飛び込んでいく姿勢、リズムが全然悪くないなと思って見ていたからです。結果的には失点後の2枚の交代という形になりましたが、先発で出た選手が責任を果たして、90分ピッチに立ち続けようと努力をしていたことはポジティブに捉えています」
――失点はPKによるものでした。
「セットプレーの流れからのハンドでしたが、やはりあの一瞬にボールホルダーにプレッシャーに行かなければいけない。バックラインをしっかり上げて後ろに重くなりすぎないように、というのはキャンプからずっとやってきたこと。そう考えるとあのクロスに対する対応が一瞬甘かったとも言えるし、一方で相手のパワーが一枚上手だったのかなとも思います。この試合は失点1を問題に捉えるより、いかにして得点を取っていくかにフォーカスするほうが大事だと思っている。そのためには当然だが効果的に前線に人数をかけていかないといけないし、それによってDFラインが適正な高さになり、得点が生まれ、失点が減っていくというサイクルにしていきたい」
――勝利が遠い状況が続いています。
「選手は闘争心を失っていないし、目立たないかもしれないけど進歩はある。去年J1に残った時や、一昨年J2で優勝した時が全て良かったわけではないように、今この結果だから全てが悪いということでもない。一喜一憂して、今までやってきたことが全てダメだったんじゃないかというふうに選手が感じてしまうのが一番いけないこと。結果は出ていないけれども、下を向くんであれば、そもそもプロサッカーの選手や監督という職業を選ぶこと自体に意味がないと思っているし、やっぱり我々は自分たちの力で状況を前に押し出していける、そういう責任を楽しんで遂行していける立場にあるのだから、今一度『たのしめてるか。』の原点に戻って、悲壮感を漂わせず良い意味での緊張感をもたせながらこれからのゴールデンウィーク3連戦に臨んでいきたい」
――あくまでポジティブに、ということですね。
「監督としてここにいる選手たちを100%信頼しているし、彼らが我々とともに良い成果を最終的には出してくれると信じている。そのリーダーとして僕は一つの目標に向かって上がっていくなかで、今は一旦膝をかがめてジャンプする余裕を作っているんだよという気持ちで選手たちに取り組んでもらいたいと思うし、僕自身そう感じている。だからこの状況から逃げないで、問題を透視しようとしたり横から見たりするんじゃなくて、正面から直視して、しっかり向き合って、自分でできる最大限のことでこの状況を打開していきたい。それは我々スタッフと選手、皆が同じ気持ちだと思います」
(構成:日比野恭三)