熱血指揮官の「湘南、かく戦えり」BACK NUMBER
連敗中でもハードな練習&若手抜擢。
湘南・曹監督と選手の途切れぬ闘志。
text by
曹貴裁Cho Kwi-Jae
photograph byShonan Bellmare
posted2016/04/27 17:00
苦しい連敗の中でも、若い選手の抜擢にも意欲的だった曹監督。ユースからの17歳・齊藤未月が大宮戦でJ1デビューを飾った。
改めて考えた「トレーニングってなんだろう」。
●4月21日(木)
昨日の磐田戦はスコアレスドローとなったが、内容的に自分たちの良さが呼び醒まされた場面が見られ、次につながる試合となったと感じている。若い選手とベテラン選手が融合し、立ち返るべき場所を示してくれた試合になった。
公式戦の日はいつも、試合のメンバーに入らなかった選手で午前中に練習を行う。そこでの練習は普段から若い選手を見ているコーチに任せることが多い。具体的なメニューや実際の指導は、そのコーチにとって自身の指導力を磨き、選手を直接的に成長させる唯一のチャンスなので僕はそばで見ているだけにしている。
そのトレーニングを見ていて、試合当日ながら「トレーニングってなんだろう」と改めて考えることがあった。
例えば1対1の練習をするとして、そこでは守備のアプローチをさせることなのか、GKと連携して守ることなのか、攻撃側に仕掛ける意識をもたせたいのか、そういった目的によってコートの広さや時間、タッチ制限などが変わってくる。そういうところに工夫を凝らしメニューを組み立てることは大事なのだが、僕が指導するにあたって一番大事にしているのは、練習後に選手が「もう終わっちゃうの?」という渇望感、もしくは頭が真っ白になるくらいやりきったと思える充実感が残ること。それこそがトレーニングだと思っている。
昨日の練習後、「コートが広かった」だとか「タッチ数を制限すべきだった」という議論をコーチどうししていたのだが、その分析自体は間違っていない一方、やはりその練習をして選手が渇望感、充実感を得ていないと結局何も残らないことに目を向けなければいけない。
そこへのアプローチとして、僕は練習中の選手の表情や息づかいを見て練習を変更できるよう、少なくとも2つはメニューを準備するようにしている。もちろん選手の顔色を窺い、大事なことを選手に要求できずに気を使うだけの練習になってはいけないが、やろうとしていることをあえて封印してでも選手のモチベーションをコントロールすることは、選手を甘やかすことでなく、必要なことだと考えている。盤面上でいくら理論として効果抜群のトレーニングだと予想されても、選手の心理にアプローチできていないと練習の効果というのは出てこないと改めて感じる1日だった。