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遠藤航がいるから、阿部勇樹は前へ。
浦和の中心は「守備感覚の似た2人」。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/04/27 10:40
浦和の心臓である阿部勇樹。彼の仕事の一部を担える遠藤航の加入が、日本屈指のマルチプレイヤーをさらに輝かせている。
遠藤が後ろにいることで、阿部は前に集中できる。
湘南ベルマーレから移籍してきた遠藤はビルドアップの能力が高く、阿部が下がらずとも後方から攻撃をうまく組立ててくれる。守備面でも、ACLでもシドニーFCの屈強な外国人選手に競り勝つなど体が強く、空中戦、1対1ともに非常に強い。遠藤の存在によって阿部の背後の守備の安定感が実現し、最終ラインでの仕事が軽減され、ひとつ前での勝負が可能になったのだ。
前にポジションを置くことで、対人やインターセプトなど阿部の持味がさらに鮮明に出るようになった。川崎戦では前半19分、中村憲剛から大久保、小林にスルーパスが出されたが阿部はそれを読み、素早くカットした。
「川崎の強みは憲剛から嘉人へのライン。直接通されるのが恐いんで、そのパスをいかに遮るかということを意識してポジショニングしていた。今日はそのパスを抑えることに集中していたし、それができたと思う」
阿部が川崎のストロングポイントを封じるプレーに集中するうえで、最終ラインが安定していることは極めて重要だ。阿部が攻撃で前に出た時は逆サイドのセンターバックが中に絞るなど、守備の連携が非常にスムーズだった。
「今結果が出ているのは、いい守備からいい攻撃ができているから。前線の守備の意識が高いので、守備のスイッチが入ると連動してプレスにいける。前がプレスにいかないと僕らはかけられないですけど、今は前線が守備ですごくがんばってくれているし、そのおかげで全体をコンパクトに出来ている」
遠藤「ラインは、ちょっと高いかなぁというぐらいに」
前線だけがプレスをかけても、後が押し上げて全体をコンパクトにしないと連動した守備は機能しない。遠藤は、その最終ラインを押し上げる役割も担っている。
「基本的にラインは高く、ちょっと高いかなぁというぐらいに設定しています。全体が間延びするとプレスがかからなくなるし、そうなると戦術が機能しなくなってしまうので、全体を25~30mぐらいの間に納まるようにしています。攻めている時間が長い時はリスクマネジメントをしっかりして、カウンターを含めどんな状況にも対処できるように考えています」
浦和が攻撃している時、どんなに押し込んでも遠藤はハーフウェイラインより前に出ることはない。もともと攻撃能力が高い選手だけに「自分も」と思うこともあるはずだが、「槙野(智章)さん、モリ(森脇良太)さんの攻撃力が高いので、自分が前に行く必要はないですね。攻から守のことをいつも考えています」と、今は持ち前の守備力を活かし、最後尾で壁になることに集中している。