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解雇が最も身近な職業はセリエ監督?
1年で8回監督を交代したクラブも。

posted2016/04/21 17:00

 
解雇が最も身近な職業はセリエ監督?1年で8回監督を交代したクラブも。<Number Web> photograph by AFLO

スパレッティ(左)とトッティの権力闘争はスパレッティの勝利に終わった。来季、ローマに彼の席はあるのだろうか。

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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AFLO

 春爛漫のイタリアにあっても、サッカー監督を生業とする人びとに気の休まるときはない。

 一つでも順位を上げるべく、どのチームもラストスパートにかかる4月も半ば、シーズンの最終盤になって、ラツィオとミランが次々に監督のクビを挿げ替えた。これで、今季中に指揮官が替わったクラブは9つになった。

 CL、EL出場権獲得や残留争いなど目的はそれぞれ異なるが、シーズン途中の監督解任劇は、強権振るうワンマンオーナーやファミリー経営が多数派を占めるセリエAクラブの毎年の恒例行事だ。

 迅速なトップダウンはチームを好転させる有効打になりうるが、独善的な経営判断にも繋がりやすい。

 そして性質の悪いことに、癖のある会長たちは、“勘”とか“フィーリング”といった第三者が判断しにくい曖昧なものに頼って、チームの命運を左右しようとする。

今季8度の監督交代を経験したパレルモ。

「こうなれば破れかぶれだ。(交代は)一か八かで決断した」

 発言の主は、パレルモの名物会長ザンパリーニだ。

 10日の32節ラツィオ戦で3失点惨敗を喫したノベリーノ監督のクビを切り、前監督バッラルディーニを呼び戻した。パレルモの監督交代は、今季延べ8度目(!)だ。

 イタリア中を見渡しても、“パレルモの監督職”ほど、即解雇と隣合わせの職業はなかなか見当たらない。

 FWディバラ(現ユベントス)を擁して11位と大健闘した昨季から一転、今季のパレルモは開幕から低迷し、降格圏を彷徨っている。

 降格恐怖症にかかったザンパリーニ会長がやることは決まっている。とりあえず今いる監督のクビを切り、スマートフォンの連絡帳から後釜候補の名前を探し出すことだ。

 今季のパレルモのベンチに座った指導者の変遷をざっと並べると以下になる。

[1] イアキーニ(1~12節)
[2] バッラルディーニ(13~19節)
[3] ビビアーニ(20節)
[4] ボージ(21節)
[5] スケロット&テデスコ(22~24節)
[6] ボージ(25節)
[7] イアキーニ(26~28節)
[8] ノベッリーノ(29~32節)
[9] バッラルディーニ(33節~)

 この有様で、選手たちに「混乱するな」と言う方が無茶だ。

【次ページ】 一度疑念を抱いた指導者に、会長は聞く耳を持たない。

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