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解雇が最も身近な職業はセリエ監督?
1年で8回監督を交代したクラブも。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/04/21 17:00
スパレッティ(左)とトッティの権力闘争はスパレッティの勝利に終わった。来季、ローマに彼の席はあるのだろうか。
一度疑念を抱いた指導者に、会長は聞く耳を持たない。
最初の犠牲者イアキーニは2年前のA昇格の功労者だが、一度疑念を抱いた指導者の話にザンパリーニは聞く耳を持たない。
後任に招いた中堅指導者バッラルディーニは、前任者の解任に猛反発した選手たちの造反に遭い、腹を立てて辞任。ザンパリーニは引き留めない。
コーチ2人に暫時指揮を執らせながら、将来も見越してアルゼンチンから若手の有望指導者スケロット(現ボカ・ジュ二オルス)を呼び寄せたまではよかった。だが、所持する監督ライセンスがUEFA基準に適合せず、イタリアの就労資格を満たさないことが判明。今季5人目の監督だったスケロットは1カ月足らずで去った。
2月中旬に戻ったイアキーニは、三顧の礼で迎えられたはずが、明らかに戦力差のあるローマとインテル相手に大敗するや、ザンパリーニから「敗者のメンタルしかない能無しめ!」と罵られた挙句、3試合限りで見切られた。人格者イアキーニが「やってられるか!」と憤ったのも道理だ。
懲りないザンパリーニは、77歳の御大トラパットーニにまで声をかけたが、すげなく断られると、ついには半分失業中だった監督ノベッリーノを担ぎ出した。ただし、'09年の春以来セリエAクラブの指揮から遠ざかっていた彼は4試合で勝ち点1しか稼げず、やはり解任。
現監督のバッラルディーニはいつまでいるのか。
ザンパリーニは仕方なく、一度は首にしたバッラルディーニにギャラ増額をもちかけ、仲違いしたチームとの和解を仲介することで再登板を了承させた。
バッラルディーニの復帰初戦はこともあろうに、スクデットへ首位を邁進する王者ユーベとのアウェーゲームで、パレルモは0-4の大敗を喫した。バッラルディーニがいつまで「現監督」でいられるか、知るのは会長のみだ。
ザンパリーニは、'86年にベネツィアでこの世界に足を踏み入れて以来、もう60回近く監督のクビを替えてきた。解任こそ、彼が唯一信じる特効薬なのだ。何かに取り憑かれたように、ザンパリーニは監督たちのクビを切らずにいられない。
リーグ戦5試合を残して、パレルモは勝ち点28で降格圏内の19位にある。残留と降格の狭間にいる17位カルピ(勝ち点31)と18位フロジノーネ(同30)の両者を何とか出し抜こうと、ザンパリーニは今日も毒を吐く。